大抵、時代を動かすアイディアは、科学や芸術ともに、それが実際に実社会で流行る10年前には考案されているもの。

発表の仕方によって、アイディアが社会に出るときに色々な意味で随分と差が出る。
経済的な効果を狙ったり、誰よりも先にそれを自分の発見にしようとしたり、「発表のマジック」こそあれど、アイディア自体は一般化する随分前に出ているのは確かだ。

逆算して考えると、「あの時代にもうこんなこと考えてたのか」と驚かされる。
音楽で言えば、宗教音楽がまだ主流だった頃に、チェンバロでかなり俗っぽいスポーティな演奏技術を見せたスカルラッティや、バッハの時代に既に宮廷音楽を次の段階に押し上げていたハイドン。
宮廷音楽主流のときにラヴソングを先駆けたベートーヴェンやベートーヴェンの死の間際に既に詩のような音楽を紡いでピアノの新たな可能性を導いたショパンやリスト。
リストに関しては晩年に誰よりも先に現代的なハーモニーを聴かせているし、ドビュッシーは思いもよらない音楽で香りや色彩を伝えるという神業を見せた。

確かに、みんな先にやっている。
その時代が到来する前からやっている。
例えば10年だ。
10年という時間の長さは想像以上に長い。
10歳が20歳に、というより20歳の人が10歳のときにと言う方がなぜか凄さが増す。

今から10年後に、何を提示していられるだろうか。
今自分の中で当たり前にあるものでないとならない。
そんなアイディアが今の自分にあるか、再度自分の中の引き出しをあさってみようと思う。