今日はこんなあったかいお話を。
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サンタクロースは妖精たちを使って、プレゼントを作るという。
クリスマスイブの夕方6時、私はサンタにこき使われた妖精よりも、もっと疲れていた。16歳の私は、「妖精」のアルバイトをしていた。当時、私はアルバイトを二つ掛け持ちしてがんばっていた。授業料を両親に頼るだけでは気が引けたし、クリスマスのお小遣いも欲しかったからだ。
二つのバイトの一つは、商店街でサンタの妖精に扮し、子どもたちとの記念撮影に納まることだった。このサンタランドでは、5分間の休憩さえ取れないほど忙しかった。でも、あと数分でそれも終わる。私は仕事をやり抜いたんだ!私はマネージャーのシェリーのほうを見た。彼女は私を励ますように微笑んでくれた。
彼女はクリスマスシーズンの途中からマネージャーになった人だが、おかげで職場の雰囲気が良くなった。店員をガミガミ言って働かせるのではなく、励まして後ろ盾になってくれた。
(中略)
私が担当しているブースは7時に閉まる。6時になり、客足もまばらになってきたので、ようやく休憩がとれた。あんまりお金はなかったが、なんとしてもシェリーにプレゼントを贈って感謝の気持ちを表したい。
さっそく石鹸や化粧水を売っている店に行ったが、ちょうど店のシャッターを下ろしかかったところだった。店員が「すいません、閉店です!」とどなった。とぼとぼとサンタの撮影コーナーに戻る途中、高級デパートのノードストロームが開いているのに気づいた。ここも もうすぐ閉店に違いない。私はあわてて店に飛び込み、ギフトコーナーへと急いだ。店内をあたふたと歩いているうち、自分がひどく場違いな気がした。
ほかの客はみんなパリッとした服装で、お金持ちに見えるのに、私だけがお金もなく、みすぼらしい妖精の扮装だ。"バカだった、こんな贅沢な店で15ドル以下の買い物をしようなんて……" 私は身のすくむ思いで、ギフトコーナーを通りすぎようとした。と、ファッションモデルのような美しい店員が近寄ってきた。「何かお探しですか?」その声に、デパート中の人がこっちを見た。 私は小声で「いいえ、いいんです。ほかの人の力になってやってください。」 すると彼女は私の目をまっすぐ見て微笑んだ。
「いいえ、あなたの力になりたいの」 私はプレゼントを贈りたいと思っている相手のこと、贈りたい理由を話し、おずおずと打ち明けた。
「たった15ドルしか持ち合わせがないんです」でも、彼女は私が1,500ドルの買い物をしたいと言ったみたいに、にこやかで優しかった。彼女は売り場を熱心に見てまわり、プレゼントを選んで素敵なバスケットに入れてくれた。
代金はしめて14ドル9セント。閉店まぎわの店内で彼女が代金をレジで打つと、照明が消えた。このバスケットを家へ持ち帰ってきれいにラッピングできたらいいのだが、でもそんな時間はない…。と、私の気持ちを読んだように、その店員が言った。「これ、ラッピングなさりたいでしょう?」「はい」 ついに閉店の時間になった。店内のスピーカーからは、客が残っていないかどうかを確認するよう、アナウンスが流れ始めた。
今夜はイブだ。この女性だってみんなと同じように早く家に帰りたいに違いない。でも、彼女はさっと奥の部屋に消えて、長いこと出てこなかった。
そして戻ってきたときには、今まで見たこともないような美しい包みを手にしていた。金と銀の包装紙で包まれたそれは、まるで50ドルもするプレゼントみたいに豪華だった。私は嬉しくて飛び上がりそうだった。
礼を言うと、彼女は言った。「あなたたち妖精さんは、商店街で大勢の人たちに喜びを分けてくれてるんですもの。今度は私があなた方に喜びをお返しする番だわ」 ブースに戻って「メリー・クリスマス・シェリー!」と、マネージャーのシェリーに声を掛けた。
シェリーは私からのプレゼントを見て、あっと息をのんだ。そうして感激のあまり、泣き出した。
クリスマス休暇の間ずっと、あの親切な店員のことが頭から離れなかった。彼女のおかげでどれだけ助かったか、うれしかったか。あのプレゼントを、うちの店のマネージャーがどんなに喜んだか。そうだ、せめてデパート宛てに礼状を出し、周りの人たちに知ってもらおう。
それから1週間後、デパートから「お手紙ありがとう」という返事がきた。それで、その件は終わったと思っていた。そう、1月の半ばまでは。
ある日、その店員、ステファニーから電話がかかってきた。「お昼を一緒に食べませんか?」ええ?私と一緒に?たった15ドルの買い物をした16歳の私と? 約束の日に会うと、ステファニーは私を抱きしめ、プレゼントをくれてこんな話をした。
「この間、社員の会合に行ったら、私が"ノードストローム最優秀社員賞"の候補に上がっていたの。ええっ!ってびっくりしたけれど、とてもうれしかったわ。だって、そんな晴れがましいことは初めてなんですもの。いよいよ、受賞者の発表になったら、なんと私の名前が読み上げられたの。表彰状を受け取りに前に歩いて行ったら、支配人があなたの手紙をみんなに読んで聞かせたの。それを聞いて、全員が大きな拍手を送ってくれたわ」
店内には、彼女の写真が飾られた。名刺には"ノードストローム最優秀社員賞"と刷りこまれ、14金のブローチと100ドルの賞金が与えられた。地域代表者会議にも、課の代表として出席できるようになった。
その会議でもまた、私が書いた手紙が読み上げられ、出席者はみな総立ちになってステファニーに拍手を送った。「従業員全員がステファニーのようになってくれることが、我が社の理想なのです!」手紙を読み上げた支配人はそう言った。
(中略)
「小さなことから世界が変わる」と聞いてはいたけれど、私が"妖精"の貧乏少女だったあのクリスマスに、私は本当に実感したのである。 小さなことでも世界を変えることができるのだと。
「みんな誰かを愛してる」ジャック・キャン・フィールド著