100人の友人か、1人の親友か。
普通の人はどちらを選ぶだろうか。
僕には、一生に1人の親友であり、
信友であり、真友と呼べるやつがいる。
1年くらいお腹が痛くて、妙に気になった俺は病院に行った。異常なしって診断だった。でも、なんとなく納得いかなくて、病院をいくつか回ってみた。1人だけ、親身になってくれる医者がいて、精密検査で徹底的に調べてくれた。後日、検査の結果が僕に告げられた。
「悪性の癌です。手術が必要です。」
目の前が真っ暗になった。
モノトーンになるというか、血の気がうせるというか、
本当に景色が色を失うってのをはじめて味わった。
癌なんて映画の世界というか、50年後の話というか、
とにかく今の自分には縁の無い話だと思ってた。
俺はまだ30歳で、嫁もいる、1歳の娘もいる。
癌って言う言葉で、俺はすげーパニくった。
といっても、嫁の前でパニくるわけにもいかない。
そんなかっこわるい姿は見せれないし、
不安にさせるわけにもいかない。
周りの友人をやたらと心配させるわけにもいかない。
俺は、小学3年からの付き合い、かれこれ20年になる付き合いの友人にだけ、自分が手術をすることを告げて、不安な胸の気持ちを聞いてもらった。小学3年の悪がきのころから、いたずらやらなんやら、一緒にやってきた友達。こいつの前ではかっこつけることもなければ、気をつかうこともないし、いまさらって話だ。
万が一、俺が死んだら嫁はどうすりゃいいんだ。一生かけて幸せにするってプロポーズしたのに、どうすりゃいいんだ?俺は死ぬわけにはいかない。。
友人もかける言葉がみつからなかったのか、電話口ではずっと黙ってたけど、俺は不安な気持ちを吐き出せて、幾分楽になった。
3週間後の手術当日、病院に行ったら、そいつが居た。
まじびびった。
だって、そいつはロンドン勤務で、日本には居ない奴だったからだ。
「たまたま出張だったからさ。」
俺に気を使わせないようにそう言って笑ってた。
金曜の深夜にロンドン出て、月曜の早朝にはロンドンに帰る出張なんてあるわけねーだろ。
手術前、そいつが急にあらたまって、
真顔になって、俺にまたこう言うんだわ。
「もし、骨髄移植が必要だったら俺がドナーになってやる。輸血が必要だったら、俺が輸血してやる。たしか人間って自分の血の3分の1くらいまでだったら輸血できるんだっけ?よくわかんねーけど、ぎりぎりまでしてやる。だから心配しねーで受けて来いよ。ま、俺も自分の嫁を守んないといけないから、3分の1以上はやれないけどな。」
そう言って笑った。
「骨髄移植って、癌では必要ねーから。で、輸血たって、お前B型だろ?俺A型だから、輸血したら死んじゃうよ!!」
ってすかさず突っ込んだ。
でも、本当は心から嬉しかった。
若干なみだ目になったのがばれんのがこっぱずかしくて、さっさと手術室に向かった。俺が女だったらまじほれてた。いまどき、友達が手術受けるからって、週末だけ海外から帰ってきてくれるやつなんているだろうか。手術がうまく行くようにってメールくれるくらいのもんだと思う。ロンドンから往復の時間と手間と、金と、いくらかかるんだろう。好きな女の子の靴隠して先生に呼び出しくらってたくせに、かっこつけやがって。。
幸い、手術はうまく行って俺は完治した。もちろん再発は心配だけど、それは30年、40年、ずっと先であることを祈る。もし、その間に、逆の立場になって、そいつが入院するとしたら、俺もすっ飛んでって、同じ事をすると思う。ブラジルだろうが北極圏だろうがどこでも行ってやる。なんだってやるつもりだ。腎臓だって一個くらいやったって死なねーだろ。骨髄移植だって、なんだってこいだ。もし血液型が一緒だったら、血液だっていくらでもやる。限界までやる。
嫁を守んねーといけないから、
3分の1以上はやれないけどさ。笑
ー走れメロスさんよりー