僕のレースの話を書いてもいいですか。
僕は日本でサラリーマンしていたんだけど、どうしてもやりたい事ができてアメリカの大学院に留学した。もちろん英語も出来ないし専門も難しい。それにアメリカの博士課程って大切な試験に落っこちるともう学位は取れずに辞めさせられるので怖い。貯金も足りないので夜はバイトだった。でも闘っていくのに気力と体力をつけたかった。だからひとりで走り始めた。大学街は5kからハーフマラソンまでレースは毎月ある。それも当日申込、千円以下で。もちろんTシャツもくれるし、レース後の食べ物も出してくれる。そして参加してるうちに、みんなで走ると楽しいことがわかってきた。

特にアメリカ人ランナーはフレンドリーだ。
走るペースが合うと、「がんばろうね」とか言いながら一緒に行くし、抜かされても「良い調子だね!頑張れ!!」って応援してくれる。最初、友達もいなかった僕はそういうランナー達に何度励まされてきただろう。次第に地元のレースでは飽き足らず遠くのレースにエントリーするまでになった 。そうそう、アメリカのロードレースの参加者は結構見てると色んな人がいる。僕はフルマラソンで長さ1m以上の星条旗とベトナム国旗を掲げながら走るおじさんを見ました。(たぶん重さは3キロ以上だと思う)レース後、聞いたところ彼はベトナム戦争帰還兵で、ベトナムで亡くなった米越の戦死者の総数のマイル数をレースで走ることを人生に課しているそうです。それがあの狂気の戦争で生き残った自分が、亡くなった同胞と敵兵にお詫びする唯一の方法だって寂しげに笑ってた。

また印象に残ってるランナーは、高校生がリアカー引いてるランナー。彼とは地元のフルマラソンで出会った。リアカーに乗せているのは、彼の弟。弟は脳性マヒで思うように走るどころか歩くことも侭ならない。だから家族と一緒に、地元のマラソンのレースを家の前で応援していた。でも、或る時お兄ちゃんに言ったらしい。

「僕も出たい。走りたい。」

って。だから、お兄ちゃんはリアカーで走った。リアカーに弟を乗せて。
「いいか。お前は俺と一緒に走ってんだぞ!バテたら声掛けろ!」って。
僕は彼らの「走り」を見た。兄貴はリアカーを引きながら、勝つつもりで走っていた。まちろんタイムは5時間を越えそうなペースだ。でも、気持ちでは負けてるとは僕には思えなかった。そして、弟は荷台で真っ赤な顔をして兄さんに声を掛けて闘っていた。タイムではない、2人の爆走を、僕はたしかに見ていた。


そして4年前。僕は暮らしていたアメリカ人の女性との婚約破棄、そして最後の博士号試験に失敗して全てが無になろうとしていた。
「もう日本に帰ろうか。」そう思っていた。
友人も多く失い、お金もなかった。夏だった。
 


最後に地元のハーフを走ろうと思った。そして諦めようと。当日は灼熱の日が照りつけていた。トレーニングの足りない僕はスタミナを使い果たして、減速していった。
「やっぱり、僕は情けない人間なんだ」と認めざるを得ない。あと、残り5キロ。
街中に入ってきている。


前には警官がランナーのために通行整理をしている。僕を認めたせいか、彼は車の進行を止めた・・・。僕は、思わず被っていた帽子を取って、警官に有難うを言い、警官の後ろの車の列に向かって帽子を振った。「有難う。こんな駄目な僕のために停まってもらって有難う」って。自虐的だって?でも、そういう気持ちだったんだ。本当に弱ってたから。本当に自信がなかったから。折角会社辞めて外国来ても、夢破れてどうして良いかわからなかった・・・・。

そしたら、聴こえてきたんだ。
クラクションが!
停まってる車に乗ってるオジサンがオバサンが声を出してる!そして、目の前の警官が僕の目の前200mくらい先のランナーを指して、
"RUN! Get HIM!!"(行けぇー!ヤツを抜かせー!)って言うんだ。
そして警官のおじさんも、車の人たちも声を揃えて
"Get him! Get him!"の大合唱になった・・・。
それからは、僕はあんまり記憶がない。カッコ良く抜いたりしたらよかったのだろうけど、僕はとにかく前に死に物狂いで走りだしたので順位が果たしてどうなったかはもうわからなかった。

ただ走った。


そして応援してくれる人がいてくれたことに、


まだ自分が走れることに,感謝したかった。


そして、この日から、僕はまた走り始めた。



運良く、僕の論文を気に入って呼んでくれる大学院があり、この夏、僕は博士号を取り、初めてやりたい仕事に就けることになりました。そして、まだ、僕は走っています。良いこと、悪いこと、これからの人生で起こると思いますが闘い続けるために走り続けたいと思っています。色んな方々がいらっしゃるとおもいますが走ることで、皆様が、(僕が得たように)生きる前向きなチカラを得ることが出来るように、良い走りができるように微力ながら祈らずにはおれません。僕も走り続けます。皆さんとも、どこかのレースで会えますように!がんばって走り続けていきましょう!そのうち絶対良いことあるよ!!!そして、・・・もし、アメリカに来られることがあるならマイナーな草レース(5Kでも10kでも)走ってみてください。きっと新しい世界が拓けると思います。普通の観光では得られない、充実感をランナーの皆さんは感じることが出来ると思います。


ーMidnight Runさんよりー