世の中に「完全」などない。

「絶対」があるのは死だけ。

W杯で代表の活躍に沸く日本の影で、世界に激震が走った。


「60億分の1の男」エメリヤーエンコ・ヒョードルの敗戦である。

相手はあのミルコに寝技を指導した男、
ファブリシオ・ヴェヴェドゥム。
寝技こそ一級品であれ、戦績もそこそこのファブリシオに、
わずか1分強で「一本負け」
かつてあの「柔術マジシャン」アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラの
寝技を完封し、その実力を世に知らしめたヒョードルが、である。

正直、格闘技は体格がモノを言う。
ヘビー級にしてはそこそこの体格であるヒョードルは、
もし負けるとしたらアリスター・オーフレイムのような「規格外」の
フィジカルを持った相手だと思っていた。

しかし今回の初黒星は、完璧に「戦略負け」である。
今まで藤田和之のパンチをテンプルに被弾しようと、
ケビン・ランデルマンのバックドロップをモロに受けようと、
その冷静さと確実な試合運びで挽回してきたヒョードルが、
相手の思う壺といった形で一本負けを期したのだ。

たしかにこれだけ無配記録が続けば、研究もされる。
穴も見つけられる。
そして、いかにヒョードルといえど「油断」も生まれるだろう。

けれどその時点でもう神話は崩れるのである。
ヒョードルに「油断」があった時点で。

「決して負けない 完全無欠の格闘家」

それがエメリヤーエンコ・ヒョードルだったのである。


ここからは神話の第2章である。

新たな皇帝の一時代を築くのか。

氷の拳はうなるのか。

「絶対王者」は「復活の皇帝」へと進化するのか・・・。


まだまだ観たい試合はいくらでもある。

とにかく次の1戦、いつになるかはわからないが、

目は離せない。


bye