おはようございます。
一子相伝の必殺拳法・丑寅珍拳の伝承者、トリです(残念ながら、うちには子供がいません)。
健康運動指導士の姐さんがテレビに出演していて、「おうちで簡単にできる体操」を紹介していた。
椅子に座って左手を上げ、右手は椅子を支え、左を向きます。
左を向いて身体も左に、上を見上げて・・・。
云々。かんぬん。
そのややこしいこと。
とても一回では覚えきれない。
ところで、最近では「身体の力を抜く」ことが当たり前のように言われるようになってきている。
いつからだろうか。
その昔は、力を入れろ、というのが一般的だった。
以前もご紹介した、岡田虎二郎の「岡田式静坐法」しかり、正中心鍛錬法、肥田春充の「肥田式強健術」しかり、中井房五郎の「自彊術」しかり。
中村天風の「クンバハカ」でも力を入れる指導が為される。
二木謙三博士の二木式呼吸法も、坂本健吾の屈伸道も、脱力を説いたものではない。
脱力を初めて教えの中心に置いたのは、合氣道である。
正確に言えば、藤平光一の創始した「心身統一合氣道」において、初めて完全に力を抜くことの効用が説かれたと思う。
柔道や県道などの武術や、それまでの体操法においても、余分な力を入れることは戒めていたが、「身体のどこにも一切力を入れるな」とは言わなかった。
それを教え、自ら実践したのが藤平先生なのである。
その後、高岡英夫の「ゆる体操」などにおいて脱力の効用が説かれ始めている。
しかし、はたして全くどこにも力を入れないでいられるものだろうか。
つまり、超リラックスは可能なのだろうか。
上原絋治という人の主催する速読教室「ルン・ル」では、「息を吐くとき余分な力を抜いていく」と教えている。
ところが、こうして完全脱力した人たちが、次々と深く眠り込んで椅子から転げ落ちたりしはじめた。
若い女性がおもらしして逃げ帰り、後日電話で「もうお嫁にいけません」と。
完全に緩むと、そういうことになるらしい。
それでは困る。
というわけで、普通は全く完全には力は抜けないと思っていいだろう。
むしろ、拮抗筋や姿勢を意識し、余分な力がどこにもかからないということを目指すべきだ。
藤平先生の教えるリラックスも、その範囲のことだろう。
そのためには、逆説的だが、力の入れ方を知らなくてはならない。
電車の中で、腰を丸めて座り、大股を開いている男性客を見かけるが、あれは緩んでいるというよりも、だらけている。
おっさんのために言うと、足を閉じるのは辛いのである。
おっさんは骨盤が開いていてがに股だから仕方がない、かというと、そうでもない。
ところが、お試しいただければわかることだが、腹に適正な力が入っていれば、体つきがどうであれ、足は閉じていられるのである。
おっさんは肚と腰の力が抜けて、肛門が締まっていないから、でれっとした下半身が、どうしようもなく開いてしまうのである。
このようにならないためにも、力を入れるべきところに自然に力が入り、抜いて然るべきところの力が完全に抜けているというのが理想的な在り方だと思われる。