HAN-AMA〜観劇雑記①〜 | 宇則齋志林

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トリの優雅な日常

おはようございます。
カリスマ演芸評論家のトリです(職業選択の以前に名乗るのも自由だ)。

先日、阪神尼崎に行った。
阪神尼崎、略して「ハンアマ」は、とにかく下町的な情緒があることで有名な地域である。
通り過ぎた商店街では、ワイモバイルショップ店員と、普通のおばちゃんがガチの言い争いをしていて、怒鳴り合う声があたりに響き渡っていた。
ザッツ、ハンアマだ。

さて、何をしに行ったかといえば、観劇である。
劇団雪月花(桜川翔座長)の三和劇場公演昼の部を見に行った。
雪月花応援団長レイジイ先生のひそみに倣った訳でもないが、ぼっち観劇である。
コロナ騒ぎをまともに食らって、お客が少なく、苦しいとは聞いていたが、これほどとは思わなかった。
限りなく無観客試合に近い客の入りだった。
その時来ていたのは、トリを含めても7〜8人だったろうか。
客の数より劇団員の方が多いのだ。
自分だったらやる気を無くして寝込むだろうな、と思ったが、幕は開いた。
ちなみに、某大学でも、生徒の数より教員の方が多くなり、半世紀以上の伝統を誇る中国文学科、ドイツ文学科、フランス文学科が消滅したそうな。
ざまをみろ。

などと喜んでいる場合ではない。
その日の演目は、以下の通りだった。
第一部 顔見せミニショー
第二部 お芝居「権三助十風流籠」
第三部 花の舞踊ショー

いきなり、顔見せで座長と近藤光さんの渾身の相舞踊があり、見ていた知らないおばちゃんが、
「あれは五万円の価値がある」
と言っていたくらいのものだった。
五万円に意味はないと思うが、そのくらい請求されても良いというくらい感動したということだろう(本当に請求されたら、おばちゃん暴れるだろう)。

そこで力尽きたのか、お芝居はアドリブでグダグダになっていた。
むしろ、そのグダグダが面白く、正統な芝居をやめて、受けなくてもアドリブで笑いを取りに行くのが奏功していたようである。
劇の最中に、近藤光さんが奥方明音さんとの馴れ初めを、多分アドリブで語っていたのは、客が少ない故のサービスだったろうか。

座長渾身の相舞踊では、今ちょうど前代未聞の無観客で行われている大相撲を意識してか、二人がすり足で動き回り、並んで雲龍型のような形をとって迫り上がる場面があった。
やはり座長も潜在意識のどこかに、このコロナ騒動を鎮め、場を清めたいという気持ちがあったのではないだろうか。
鬼神をも動かさんとする気合が感じられた。
※撮った写真は殆どがひどいピンぼけで、唯一誰だかわかるのがこの一枚。
※※だから、と言うわけでもなく。菊章吾さんのファンである。何せ明るくて温かい人柄だ。芸の深浅は見分けられなくても、人柄は伝わるものだ。