TBSアナウンサー向井政生くんが天国に召されて行きました

 

 

 

 

同じ大学で

私も妻も

アナウンサー“同期”の友人なんです

 

がんでした

 

顎下腺(がくかせん)がんというあごのがんだったそうです

 

話すことに関して重要な「あご」

とても辛かったと思います

 

がん闘病をしていると言うことは聞いていました

 

治療を受けて、その後、仕事復帰をしていたのですが、無念だったと思います

 

すごい男でした

 

先日のブログで、アナウンサー養成専門学校、アナウンスアカデミーの話をしたばかりですが、向井くんとは、その学校で同期として、アナウンサーを目指す学生として共に頑張っていました

 

学生の頃から、声も良くて、落ち着いていて、本当に優秀でした

 

そのまま今すぐにでもニュースを読めるのではないかと言うくらいレベルの高い男でした

 

真剣に授業に取り組んでいて

ノリだけで「アナウンサーがやりたい」と先生の言うことも聞かずに突き進んでいた私とは全然違う、信頼のおける真面目な男でした

 

しかし、バブルの時代に真面目すぎたのか、就活で良いところまでは行くものの内定は出ませんでした

 

以前、ブログで報告したと思うんですが、私は当時TBSで「ぴったしカンカン」や「クイズ100人に聞きました」などバラエティー番組の前説司会の学生アルバイトをしていて、上からの誘いもあって、もうTBSに就職できるような気持ちでいました

 

そんな浅はかな学生でした

 

しかし、私たちが就職活動をした年、TBSだけが男性アナウンサーの募集をしなかったのです

 

そこで、向井くんは、信じられない決断をしました

 

TBSアナウンサーを目指して、卒業する事はやめた。留年する」

 

彼は就職浪人の道を選んだのです

 

高い倍率のアナウンサー試験、いくら優秀な向井くんでも

それは無茶だと思いました

 

ただ、それぐらいキー局でアナウンサーになるという強い信念を彼は持っていたのです

 

同期の多くが全国でアナウンサーになっていく中で

1年留年した向井くん

 

そして、翌年、見事TBSのアナウンサー試験に合格したのです

 

すばらしいと思いました

奇跡だと思いましたけど

あいつならやるだろうなとも思いました

 

アナウンスアカデミーの中では、レジェンド的な存在です

 

スポーツアナウンサーとして活躍したり

ニュースキャスターになったり

ナレーションに力を入れたり

 

本当に彼らしく

派手な場所ではなく、地道に、そして本当に聞きやすいアナウンスメントを実践していました

 

早朝や深夜、週末のストレートニュースをしっかりと伝えていました

 

そんな向井くんの姿を見るたびに

自分もしっかりしなきゃなと背筋が伸びる気持ちになりました

 

私などと全然違うタイプの実直なアナウンサーでした

 

がんから、一度復帰した後、「青空」と言う朗読劇をラジオドラマ化した番組で、彼は重要な役を務めたのですが、その時の取材で

彼はがんサバイバーであることをカミングアウト

 

そのインタビューで彼は

顎(あご)のがんで、治療の結果、舌の動きが少し鈍いので

音声や滑舌が完璧ではないのに「この役をいただいて良いのだろうか」と葛藤があったことを述べていました

 

「向井らしい」と思いました

 

私だったら

「がんサバイバーとして頑張ってるところを、みんなに見てもらいたい」

そんな風に答えていたでしょう

 

彼はどこまでもアナウンサーとしての明瞭な音声、わかりやすさを誠実に突き詰めていました

 

がんを乗り越えたんだから

いいじゃない

 

多分そんな考えは微塵もなかったんだと思います

 

局アナの鏡

 

向井くんのような人の事を言うのかもしれません

 

残念ながら、彼は還暦を迎えることができませんでした

 

やっぱり考えてしまいます

 

2019年の11

がんの診断を受けたということは

私と全く同じ時期にがんの診断、治療を行っていたということなんです

 

なぜ私は、元気にして頂けて

向井くんは天国行かなければならないのか?

 

今は、がんの治療も進んでいるのに、亡くなっていく方もいる現実を改めて突きつけられました 

 

「返していただいた命をもっともっと大切にしなければいけないよ」

 

向井にそんなふうに言われているような気がします

 

おそらく、天国に行っても、発声練習と滑舌の練習をやってるんだろうな

 

向井ありがとう

局アナとしての誠実な姿を見せてくれて

 

そして、安らかに…

 

妻も悲しんでいるよ

 

 

 【追伸】

向井くんと親しくしていた友人から連絡をもらいました


「笠井が良くなったんだから、負けてらんない」


そう言って、向井は頑張っていたそうです


すまない


その文面を見たときに

たらず涙が出てきました



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