型の内形は、イメージが作用力に変換される意識のプロセスを指します。

手に棘が刺さったり、火に触れたりする際の手の引っ込める反射作用に似ていますが、

この反射は痛い・熱いからという思考ではなく、感じた瞬間に手がすでに引っ込んでいるのです。

つまり、この反射は意識を超えた時間の中で生まれるものです。

 

同様に、イメージの作用力も相手が感知する時間がないため、気づいた時には軸が崩れたり、倒れたりします。

これらは思慮する余裕のない世界で起こる出来事です。

 

ただし、その成立過程には違いがあります。

 

棘や火による反射は本能的であり、脊髄反射に基づいていますが、型の内形は身体の質感を統一化する動きが繰り返され、そのイメージが脳に刻印される結果です。

これは単なるイメージではなく、イメージが生じた瞬間に身体がその状態になるというものです。

つまり、イメージが自分の身体の状態を変容させるのです。

これは外面的には見えませんが、身体内部ではイメージが起きた瞬間に微細振動が生じています。

この振動が他者への作用力となりますが、

頭で考えた体の動きが相手に伝わるのではなく、

自分の身体状態が相手に転写されるものであり、

これは瞬時に起こります。

 

相手はそれを感知できないのです。

 

それは通常の時間感覚を超えた時間で起きており、

夢意識(半トランス)に似ています。

たとえば、夢の中で通りを歩いている最中に誰かとぶつかり、

言いがかりをつけられ、殴られて倒れる出来事が起きたとします。

そのような出来事は実際の時間で測れば5分か10分くらいでしょう。

 

しかし、夢の中ではほんの一瞬、数秒の出来事です。

内形というイメージの作用力も、

この夢意識に類似しており、通常の時間感覚を超えています。

そのため、技をかける際の心は、この夢意識状態に近いものである必要があります。

自分の動きを自分で行うものではなく、

自分の動きを夢のように遠くで見ているような状態に持っていく必要があるのです。

 

内形の作用力は心の状態が大きく影響します。

わずかな心の変化でも身体の質感が変わってしまいます。

相手を倒そうと思うだけで、

身体は夢意識から目覚め、イメージによる作用力は消失します。

 

この場合のイメージの作用力とは一般的なスポーツのイメージトレーニングとは異なります。

スポーツのイメージは動きに焦点が当たっていますが、

武術のイメージは動きというよりは身体の質感を問題にしているのです。

イメージ通りに動くというより、どのような動きをしても内部感覚としての身体状態に変化が起きないようにするということです。

そのため「上手くやろう」とか「相手を倒そう」、

そういう考えや思いが少しでも湧けば、

身体の質感が変わってしまうのです。

 

つまり、思慮という「我(が)」が介入すると型の内形という作用力は失われるのです。

そのため、型の内形が身についたら、心の修練が次に来ます。

つまり、どんな出来事が起きても夢の中にいつづけるための意識の集中が必要です。

これはぼんやりと何も考えない瞑想的な集中ではなく、明瞭な夢意識に没入するような集中度を高めることが求められます。

この集中度の高い意識状態は表情としても現れます。これを「観の目」と呼ぶことがあります。