サンチンの型稽古を行うときにまず、

最初に大切になるのが、正しい形状を守ることです。

 

サンチンの型はざまざまな三角形の形状が出できています。

 

そして、この三角形の角度がとても重要になります。

 

上半身では、肘と脇の角度

そして下半身では、足の角度、それと体幹部分につながる脚の角度です。

 

下半身の足と脚の角度は動く時に変わりやすくなりますから注意が必要です。

 

足と脚の角度が変わらないように動くことで、

下半身が上半身と螺旋状につながることができます。

 

そのため、その角度が変わっていないかどうかを知る一つの目安が、

型を終えた地点が型を始めた演舞線上の地点と同じであるか、どうかです。

 

もし違っていれば、角度が変わっているということです。

 

ですから、初心者の人は当面下半身が正しい形状を守って動けるようになることを目標にするといいでしょう。

 

それは言い換えれば、型を始めた演舞線上の地点に必ず戻ることができるかどうかです。


サンチンで言えば、目を置いた正面の演舞線上の地点、ナイファンチンでは、右横を向いたときに定まる演舞線上の地点です。


もし終点が、演舞線上の始点からずれていれば、足幅のずれ、ねじれが生じたことになります。


 

では、なぜこれらの形状を正しく守って型稽古をしなくてはならないのか。

 

その理由は型が求める形状を正しく守って動くことで、

身体が深い部分で繋がり、まとまっていくからです。

 

そして身体がまとまれば、身体の構造の中心が仙骨になり、

 

動きの中心が脚ではなく、命門に移ります。

 

身体の構造の中心=仙骨

動きの中心=命門

 

これがサンチンの型が求めている身体状態への

重要なポイントです。

 

仙骨は構造の中心であるため、決して動かしてはいけないところです。

仙骨操作は厳禁です。

 

一方、

命門は、エネルギーの発露の中心点であるため、

周辺部分の筋肉は柔らかくしておく必要があります。

 

つまり身体の表面部分は張りはあっても

命門という腰まわりの中心部分は柔らかくなっている必要があります。

命門をコアとすれば、そのコアはふわっとしたものでなければなりません。

 

そうなることで動きをもたらす原動力となるエネルギーが働きます。

 

動きの原動力としての命門はエネルギーの発露であり、その発露は重力との関係で生じます。

重力の働きとの調和によって生み出されるものです。

 

重力との調和であって、重力に任せることではありません。

 

重力に任せるとなると、股関節を緩めたりして、重さをかける方向にいきますが、

そうではなく、命門の開きは重力との調和によってなされるものです。

 

私たちは幼いころ、そのような身体状態にありました。しかし、

年を重ねるたびに重力と調和する力を失っていきました。

 

大人が後ろ向きに転がるのと、乳幼児が後ろ向きに転がるのを比べると良く分かります。

 

大人は転がるというより倒れます。上手く転がることができても多くの場合

腹筋の作用力でそうなっています。

 

しかし、乳幼児は見事に転がります。そのスピードは等速です。

それは

幼い子供の身体が重力との調和力をもっているからです。

 

幼いころは身体そのものに重力と調和しようとする意志性が備わっていますが、

 

学童期からその意志性は、自我の発達とともに消えていき

やがてそれは思考の意志性に移っていきます。

 

そのため、命門は閉じてしまいます。

 

つまり思考の発達とともに、身体の心である意志性は消えてしまうのです。

 

自我の発達と命門は大いに関係があります。

 

考える

ということが始まる結果、命門は閉じ、その生命力は失われていきます。

 

言い方を変えれば、思考の発達が

生命力を奪っていくのです。

 

この頭部思考と身体生命力との関係は

旧約聖書にでてくる天国にある二本の木の話を彷彿させます。

 

「知恵の木」と「生命の木」

 

再び身体の意志性を蘇らせるには

思考を静める必要があるのです。

 

 

サンチンの型稽古をすればなぜ元気になり

活力が湧いてくるかは

 

この命門の開きが深く関係しているからです。

 

ただ、命門という生命力のゲートは、自分の意図では

開くことができません。

 

そのためには、思考の発達とともに消えた身体の意志性を蘇らせる必要があります。

 

話が長くなりました。

 

いずれにせよ

サンチンの型稽古によって

身体の構造の中心が仙骨になり、動きの中心が命門に移ったとき

身体は統一体という術体になり、そうなってはじめて空手としての技を

だすことができるようになります。