狐狸の話 その一 狐の行灯
 
狐や狸がひとを化かす話は全国的に広く分布しています。
今回は、そんなお話をいくつか紹介してみましょう。
 
むかしむかし
ある油商人が、山道を歩いていました。すると、突然日が傾き、あっというまに真っ暗になってしまいました。
「おや、秋とはいえ、随分早い日の入りだ」
幸い、近くにあかりが見えました。行ってみると、立派なお屋敷です。
門を叩くと、美しい女の人が出てきました。
商人が一夜の宿を頼むと、女は快く了解してくれ、奥の座敷に通してくれました。
「これをつかってください」
女は行灯を用意してくれました。
しばらくすると、行灯の火が小さくなってきました。
見ると、油がなくなりかけています。
女を呼びましたが、なぜか返事が返ってきません。
「しかたない。真っ暗では困る」
商人は仕方なく売り物の油を行灯にさしました。
しかし、行灯の火はまたすぐに小さくなりました。油皿を見ると、さっきいれた油がもうなくなっています。
「おかしいな」
商人は仕方なく油をそそぎました。
 
さて、山道をあるいていた男は、おかしなことをしている商人を見つけました。
道の真ん中に座り込んで、油を地面に注いでいるのです。
「あいつはなにをしているのだ?」
見ると、地面にたまった油を狐がなめていました。
「ははあ、さては狐に騙されているな」
男は石を投げて狐を追っ払いました。
すると、商人も正気に返りました。
あたりは、まだ真昼間だったということです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
狐は油物が好きだといわれていますね。