なまことくじら
 
むかしむかし
くじらは海で一番大きく、そして泳ぐのが速かったので、いつも自慢ばかりしていました。
それを快く思わないなまこは、ある日くじらに言いました。
「くじら君。君は自分が海の中で一番速いと自慢しているが、ひとつ僕と競争してみないかい?」
「なに? おまえが俺と? ハッハッハ!」
くじらは馬鹿にして相手にしません。しかし、あんまりなまこがしつこく頼むので、了解してやりました。
「では、ここからここまで競争だ」
くじらはものすごい速さで泳ぎました。
しかし、目的地につくと
「やあ、くじら君、いま来たのかい」
となまこが待っています。
「そんなバカな! よし、もう一度だ」
「いいだろう。では、こんどはあそこまで」
くじらは全速力で泳ぎました。しかし、今度もまたなまこが目的地で待っていたのです。
その後も、なんども勝負をしましたが、すべてなまこの勝ちです。
とうとうくじらは降参し、それ以降、あまり威張らなくなったということです。
 
実は、なまこは一匹だけではありませんでした。なまこはどれも外見が似ているのを利用し、仲間達をあちらこちらにあらかじめ配置しておいたのでした。
 
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動物競争のお話ですが、「ウサギとカメ」などにくらべてなまこが少々ずるく感じます。