えびの腰が曲がった理由
 
むかしむかし、それは大きな鳥がいました。
翼を広げたら、子どもが十人手を広げてならんでもまだ足りない、というほどの大きさです。
「自分はこの世で一番大きい」
鳥はいつもそう言っていばっていました。
ある日、鳥は「どれ、よその国の奴らにも、俺様の大きさを見せ付けてやろう」、と思い立ち、まずはとなりの唐(中国)を目指しました。
 
さて、広い広い海を越えているうちに、さすがの鳥も疲れてきました。
どこかに島でもないか、と見回していると海の中から二本の竿が出ているのに気づきました。
「ちょうどいい。あそこで一休みしよう」
と、鳥はその竿にとまりました。すると、
「だれだ。俺のひげに乗る奴は」
という声がして、それはそれは大きなえびが浮き上がってきました。
その大きさは、子どもが百人手を広げてならんでもまだ足りないでしょう。
鳥はすっかりおどろいて
「えびさん、ごめんなさい。あなたこそ世界で一番大きい者です」
と、あわてて逃げてしまいました。
「そうか、この俺が世界一大きいのか」えびはそう言われて悪い気はしません。
「どうだ、俺様は世界一大きいぞ」
と威張りながら泳ぎ回りました。
 
さて、日が暮れかかり、そろそろ休もうか、とおもったえびは、ちょうど寝るのによさそうな洞穴をみつけました。
「よし、きょうはここで寝よう」
えびが洞穴の中に入ると
「これ、俺の鼻の穴にはいったのはだれだ」
という声がしました。
なんと、洞穴だと思ったのはそれはもう、大きな大きなカメの鼻の穴だったのです。
その大きさは、鼻の穴だけでも子どもが千人手を広げてならんでも足りないくらいでしょう。
「これじゃ、くすぐったくてたまらん。ハ、ハクション!」
カメがくしゃみをしたからたまりません。
えびは軽々と吹き飛ばされ、腰が岩にあたって曲がってしまいました。
だから、えびの腰はいまでも曲がっているのです。
 
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スケールがムダに大きなお話です。
カメではなくアンコウなどの場合もあるようです。