證誠寺(しょうじょうじ)の狸
 
むかしむかし
上総の国(千葉県)木更津の證誠寺でのこと。
ある晩、和尚さんが眠ろうとすると、庭からにぎやかなたいこや笛の音がします。
「おや、なんだろう?」
和尚さんが戸の隙間からのぞいてみると、大小さまざまな狸が100匹あまりあつまり、腹を叩いたり、木の葉を笛に変えたりして楽しそうにおどっていまいした。
もともとにぎやかなことが大好きな和尚さんはたまらなくなり、思わず
「わしもまぜてくれ」
と叫んで庭に飛び出しました。
狸たちは、最初は驚いたものの和尚さんの楽しそうにおどるすがたを見て、一緒に楽しい晩を過ごしました。
 
次の晩もたぬきたちがやってきて、
「證誠院のぺんぺこぺん、俺らの友達ゃどんどこどん」
と唄いながら腹を叩きます。
「なにを、負けるものか」
と和尚さんも三味線を持ち出してべんべんっと鳴らします。
狸たちは
「それ、和尚さんに負けるな」
と大張り切り。
こうして楽しい晩は数日続きました。
 
さて、和尚さんは今日も狸たちがくるだろう、と楽しみにしておりましたが、朝までだれもやってきませんでした。
「おかしいな。なにかあったのだろうか」
和尚さんが庭に出て調べてみると、草むらで一匹の狸が死んでいるのをみつけました。
いつも先頭に立って腹鼓をしている古狸で、腹を叩きすぎて、皮が破れてしまったのです。
和尚さんは可愛そうなことをしてしまった、とその狸を境内に埋めて供養してやった、ということです。
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童謡で有名な證誠寺のお話。
お寺には、いまでも「狸塚」というものがあるそうです。
 
 
 
證誠院のぺんぺこぺん、俺らの友達ゃどんどこどん