鶏と猫
 
むかしむかし。
ある長者が、鶏と猫を飼っていました。
 
ある日、突然真夜中に鶏がときをつくりました。
みんな寝静まっていたところを起こされて不機嫌です。
「夜中に鳴くとは不吉だ」
と、長者はその鶏を殺してしまいました。
 
それからいく日かして、旅の坊さんが長者をたずねてきました。
「拙僧は、昨晩村はずれの荒れ寺に泊まりましたが、不思議な夢を見ました。『わしは長者の家で飼われていた鶏だ。おなじく長者に飼われている猫が、主人を殺そうとしている。それを知らせようとして、ときをつくって教えたが、わかってもらえず殺されてしまった。どうか、このことを主人に知らせてほしい。そして、猫のたくらみをとめてほしい』と」
 
さて、長者が夕飯を食べているとき。
猫がやってきて、長者の飯をまたぎました。
坊さんの言葉を思い出した長者は飯に口をつけず、これをこっそり猫の飯に混ぜておきました。
すると、その飯を喰った猫は
「ギャ!」
と悲鳴のような鳴き声をあげて死んでしまいました。
 
長者は、忠義者の鶏を殺してしまったことをとても後悔しました。
そして、庭に鶏を祭った塚をつくり、その霊魂をなぐさめた、ということです。
 
 
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「猫のまたいだ飯は喰うな」といわれていますが、このお話のように、猫がのろいをかけている(話によっては毒をもっている)と言い伝えられているからです。