心法書道の慧竹です。

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何のために書道をやっているのかわからなくなった私が、あれよあれよという間に、導かれた書道留学。不思議な先生の不思議なレッスンは、その問いに対するドストライクな答えだった。書の学び方に悩んでいる方に、読んでいただきたい体当たりの体験記です。

(文中の短歌は母が詠んでくれたものです)

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 先生に会ったら解決しなくてはならない重大なことがあった。それは、月謝をいくらにすればいいかという問題だ。李さんを介して再三聞いてもらったが、その度にいらないと言われた。先生は、国際漢字芸術研究センターの理事長をはじめ、芸術・文化関係の様々な仕事をしていて出張も多く、また大学では教壇に立ったりととても忙しい人だった。

 

 なんとか受け取ってもらうことにしないと、私もどうにも教えてもらいにくかった。やはりこの辺は日本人である。

 中国人は親しくなるとお金のことを細かく言うのを嫌う国民だというのは知っていたけれど、先生と私の立場は違う、まだ知り合って間もないし、第一友人ではなく師弟関係なのだから。

 

 しかし先生は、

 「中国で勉強するために、大学に通って授業料はかかるし、寮に入るわけだから寮費もかかる、それだけでも大変な出費なのだからいらないよ。」というのだ。

 

 でも、「どうしても払わせてほしい」とお願いした。

やっとのことで承諾してもらったものの、今度は金額を言ってくれない。

 

「いくらでもいいよ」というばかりで悩んだ挙句、日本で先生についていた時と同じ額にすることにした。

 

 それから毎月毎月、あれほど苦労するとは思わなかった。月謝を渡そうとする私に、必ず第一声は「いらないよ」というのだ。「いいや、それは困ります」「いやいいから」「いやほんとに受け取ってください」

 

 こういう会話を毎度毎度やっていたのだから。そのうちある程度事務的になってもよさそうなのに・・・私は先生の人柄にほんとに頭が下がる思いだった。

 

 留学前、「中国へ行ったら騙されないようにしなさい」、「すぐに人を信じてはダメよ」と心配していろいろな人が私に忠告したものだった。李さんをはじめ、先生たちに会うまで中国って一体どんなに怖いところかと思っていた。

 

そんな私が、先生をはじめ、周りのスタッフの人たちに囲まれ、どんな幸せな思いをすることになるか、それからしだいにわかっていくことになる。

 

つづく

 

『中国書道留学記』 大西智子著  1,100円(税抜き) 

在庫限りとなりますが、ご要望の方はこちらまでご連絡ください。

shinposhodo@gmail.com

 

秩父 雲海

 

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