心法書道の慧竹です。

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何のために書道をやっているのかわからなくなった私が、あれよあれよという間に、導かれた書道留学。不思議な先生の不思議なレッスンは、その問いに対するドストライクな答えだった。書の学び方に悩んでいる方に、読んでいただきたい体当たりの体験記です。

(文中の短歌は母が詠んでくれたものです)

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 紹介してくれることになっている先生は、李さんの直接の知り合いではなく、李さんの友人である教育部のある方の推薦で紹介されることになっていた。何はともあれ、さっそく政府機関の教育部に寄り、その人を訪ねることになった。一緒に先生宅へ向かう手はずになっていたようだ。

 

 薄暗い玄関を入り、天井の高い応接室に通された。留学前、親切にしてくれた中国語の先生から少しばかり中国式生活様式を教えられていた私は、出してくれたお茶に目をやった。茶葉がそのまんま入っている。蓋でその浮いている茶葉をよけながらお茶をすすった。私はさっそくお目見えした中国っぽさにこっそり心ときめかせた。

 

 邵先生 たうたうやって来ましたと 握手は固く 調子(トーン)は高し

 

 ドアから颯爽と現れた人は、邵さんといって、背がすらっと高く、知的で、穏やかそうな、なおかつ凛としたすてきな人だった。教育部なんて政府機関に、いきなり連れていかれ緊張していた私に、さっと右手を差し出し握手を促された。その手が大きくてすごく温かかったのをおぼえている。

 

 初対面で挨拶する際、握手をかわす習慣がこんなにいいものだと思ったことはなかった。お互い仲良くやっていきましょうという意思表示にはもってこいの手段だ。これから始まる中国生活のスタートをきったのだと、私はこの時確信した。

 

 邵さんは、全く言葉のわからない私に、日本語で話しかけてくれた。在日中国大使館に二年ほど赴任していたらしい。李さんからエリートだと聞かされていた私は、緊張していたが、そこに現れた邵さんから偉ぶった印象は全く受けなかった。その反面、またどこか普通の人にはない気品を漂わせていた。私が留学するにあたって、邵さんが保証人になってくれるという。不安がいっぺんに吹っ飛んだ気がした。

 

 挨拶もほどほどにすませ、再び車に乗り込み、さっそく先生に会いに行くことになった。

 

つづく

 

『中国書道留学記』 大西智子著  1,100円(税抜き) 

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ホトトギス