心法書道の慧竹です。

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何のために書道をやっているのかわからなくなった私が、あれよあれよという間に、導かれた書道留学。不思議な先生の不思議なレッスンは、その問いに対するドストライクな答えだった。書の学び方に悩んでいる方に、読んでいただきたい体当たりの体験記です。

(文中の短歌は母が詠んでくれたものです)

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 ボランティアをしていた方は、それまでも中国人留学生をたくさんお世話してきた人らしい。母親と同じくらいの年齢の女性で、控えめで上品なとても感じのいい方だった。

 

 その人から一人の中国人男性を紹介された。現在も東京在住で名前は李さんという。以前日本の大学に留学していた頃、その方にとても世話になったらしい。たくさんの中国人留学生を見てきた中で、彼が一番誠実で信頼できる人だと彼女が太鼓判を押した人だった。

 

 李さんとはもちろん一度も面識はなかったし話したこともなかった。東京で貿易会社を経営していて、年に何度も中国へ出張し、一度行ったら何ヶ月も帰ってこられないことも珍しくなかった。

 

 そんな中、李さんはあの方の頼みだったらと、忙しい合間をぬって中国の友人にいろいろとあたって先生を探してくれたのだ。

 

 人間関係の難しさに挫折していた私にとって、信頼関係だけでこんなにもいろんな人が動いてくれるということに心打たれた。ただ李さんは、一度も中国に行ったことのない私に、自分の目で見てほんとに留学できるところかどうか確かめた方がいい。決めてしまう前に先生と会って、書をみてもらってはどうかと勧めた。

 それから二ヶ月後、李さんの同行で、先生に会うため中国、北京へ赴いた。

 

 李さんは、当時まで二十八年間ずっと日本で暮らしてきた私に不安があったのだろう。中国で書を学びたいという意欲はあっても、実際生活するとなるとそう簡単ではないと思ったのだと思う。李さんはもうかれこれ十年以上日本に住んでいて、ビジネスマンとして両国を熟知していただろうし、生活面での習慣の違いに私が適応できるか心配してくれたのだろう。

 

 李さんとは、面識のないまま、FAXで送ってもらったパスポート写真だけをたよりに、北京の空港で待ち合わせることになった。

つづく

 

『中国書道留学記』 大西智子著  1,100円(税抜き) 

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