心法書道の慧竹です。

いつもご覧いただきありがとうございます。

 

かつて日本筆跡診断士協会に所属していた頃、会報【筆跡】の101号に掲載された論文です。前回の芸術療法①からお読みください。

 

 

しばらくして、ある作業療法士の方と【リハビリにおける書の有効性】について話す機会を得た。彼は長年医療現場で脳の障害を回復するためのリハビリテーションに従事していた。

「僕自身ずっと書道をやりたいと思っているんですよ。その有効性は医療の現場で直に見て、明らかにすごいと感じてきましたからね。書は文化的背景がすごくて、精神や脳の障害の回復に対しても書は強いんですよ。」と力説された。

 

例えば、統合失調症の患者さんは、幻覚や幻聴に悩まされるといった症状があり、芸術療法でも絵画やお花など自由度が強いものは、どうしても病的なものが出てきて出来ない。

あまりに多くの情報が入ってくると混乱してしまうというのだ。

情報の制限、つまりある程度の情報を遮断することで、入る範囲のMAXを設定してあげると、落ち着いて取り組むことができ、それが患者さんの自信になるという。

 

それが可能なのは書道と茶道だというのである。

 

私の友人の母親は水墨画家で、かつ書道の心得もある方である。お仕事を引退された後は、自分の好きな絵を描いて過ごすことが夢だったそうだが、統合失調症を患って以降、絵を描くことができなくなってしまった。しかし気分がいい日、書道であればできるというのである。

 

茶道の例はこうだ。

都内の中学校で、茶道部の先生をしている友人から聞いた、ある茶道部の男子生徒の話である。

秋の文化祭に向け、直前まで真面目に練習してきたその生徒は、実は精神を患っていて(病名は不明)、パニックを起こすと突発的に走り出してしまうらしく、夏前から学校の授業を全て休んでいたというのだ。

友人は、その事実を教師や家族から聞かされていなかったわけだが、毎週必ずお稽古には参加しており、まさか茶道部の活動だけのために登校してきていたとは思いもしなかったのである。

シャイな生徒という印象はあったが、お稽古の間の所作や対応に病的なものを見出すことがなかった友人は、その事実を聞いて大変驚いたという。

 

書道や茶道は、情報過多な現代社会で疲弊した脳を、健やかに整える力を持っているのではないか。

 

お茶の先生をしている友人は、お点前をしているのがとにかく気分がいいという。それは私がただ臨書しているのが心地いい、というのと脳の中で起こっている状況は同じことなのかもしれない。

 

医療の場において、さらなる研究がなされることを強く期待する。

 

 

先月友人から届いた誕生日プレゼント ありがとう♡