父の部屋を片付けた時に、神主だった祖父の「大祓詞(おおはらえのことば)」のカセットテープが出てきた。確か父にとって祖父の形見といえば、これだけのはずだ。テープを再生すると、宮崎弁の祖父の言葉から始まる。
「私も80歳になり、神主を務め50年になりました。自分の記憶を確かめるためにも、大祓詞を録音することにしました」。
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聴いてるうちに、ふと、小学生の頃に宮崎の実家に帰った時、祖父が「テープに撮ったから、これを聴きなさい」と言っていたことを思い出した。愛宕神社のお守りと一緒に。もう、30年以上前の話だけど、父はそのテープを後生大事にしていたわけだ。
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いつか父を、生まれ故郷へ里帰りさせたいなと思いつつ。僕にとっても唯一の形見であるテープを繰り返し聴いている。
独特で静かな抑揚の大祓詞。今までいろんな機会に聴いていたけれど、祖父の言霊というのは、深い感銘を受ける。
神主家系だったというルーツは、画家になった今でも、大事な支えになっている。