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脱原発から脱電力へ

 僕がこのブログをさぼっていた2年の間、日本では、いや世界中で様々なことが起きました。 

 なんと云っても我々日本人にとって重大な出来事は、東北大震災とそれにともなって起きた原発事故でしょうね。

 大震災は決して過去のものでは無く、今でも苦しんでいる被災者の方がたくさんいる。まだまだ終わってはいない。とりわけ原発事故によって避難している方々の苦しみや無念さは計りきれないものがあるでしょう。

 福島の原発事故は、我々日本人に大きな問題を投げかけました。
これから原発をどうするのか、どのように付き合っていくのか、という問題。

 原発に関しては、反対派や推進派(容認派)と意見や考え方はひとそれぞれだろうが、ここではそのことには触れないでおきます。
正直なところ僕にはどちらが良いのかはっきりと解らないのです。

 これらの問題が語られる時、必ずと云っていい程出てくるキーワードがある。
それは、「再生可能エネルギー」という言葉です。
 もし本当に再生可能エネルギーで僕達の生活や経済活動の全てがまかなえるのだとしたら、極めて危険な原子力に頼る必要もないはず。

 もう一つ、よく出てくる言葉は「節電」。
もし、本当に電力が不足するのなら、そりゃ節電せざるを得ないでしょうね。

 でも、僕は、あえて提案したい。
「節電」ではなく、「脱電」だ。つまり、「脱原発」というよりは「脱電力」だ。

 現代では、物理的にものを動かす場合、そのほとんどが電気的エネルギーを必要とするのは、周知の事実です。
 思い出して欲しい。僕がこのブログで語ってきた古代の時計のエネルギーは、そのほとんどが錘(おもり)かゼンマイです。

 よく、考えてみると、特にゼンマイは一部のおもちゃを除いて、動力として使われなくなってしまった。これは本当に素晴らしい発明なのに・・・

 最近でゼンマイの仕込まれたおもちゃと云えば、チョロQかな?
チョロQをちょっと引っ張って、パッと放すと勢いよく走りだす。
でも、ほとんど一瞬で動かなくなる。

これはゼンマイのエネルギー(パワー)が一瞬で放出されてしまうからですね。



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(ご存知チョロQ、実は筆者は以前ちょっとしたチョロQコレクターだった)





 そうです、皆さん、もうひとつ思いでしていただきたいのが、機械式時計にとってもっとも重要な機構である脱進機です。もしチョロQに脱進機を仕込んで、ちょっとステアリング「(タイヤ)をカーブするようにしておいたら、ゆったりと5分や10分は動き続けているはずです。なんとも優雅な感じがしませんか?


 ギアの組み合わせで回転数を落とすなんてのは、ほんとの意味でのレギュレイター(パワーを一定に保つもの)にはならない。やはり、脱進機が必要です。

 そんなことができるか?と思う人もいるかもしれませんが、絶対にできるはずです。機械式の腕時計にはあの小さな筐体のなかに必ず脱進機が組み込まれているわけです。結構安価な中国製の機械式時計もたくさんあります。ですので、そんなにコストもあがってしまう訳ではないはず。

 とすれば、もっとゼンマイの巻数を増やしたりゼンマイの厚みを増してパワーを上げ、脱進機を組み込みしようすれば、実際に様々なものに実用可能だと思うのです。
 そうそう、錘のエネルギーだって、きっと様々なものに応用が効くとおもうのです。古代ローマでは、扉や門を開けたり、舞台装置などに錘のパワーが結構使われていたんです。

 僕が提案したいのは、電気のエネルギーを使わずにゼンマイや錘のパワーで動かせる物をもっと作れば、ということ。つまり、「脱電力」です。再生可能エネルギーどころじゃないですよ。修理をすれば、ほとんど半永久的に使える。
百年も前に作られたアンティーク時計もきちっとオーバーホールすれば今でも使えるんですから。

 数百年前から作られている機械式時計は、いまでもれっきとした現役の実用品なのです。そして、機械式時計は少なくとも1日中ずっと動き続けているんですよ。

 皆、機械式時計を見習えっ!・・・とは、ちょっと言い過ぎでしょうか?


 次回はこの実用例について、もう少し検証したいとおもいます。