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時計のエネルギーその2

篠原康治(時の作)



 前回は時計のエネルギーについてお話を始めましたが、横道にそれてしまって、それっきりになってしましました。


 でも、変り種の時計のことを考えたり語ったりするのは、とても楽しいんですよ。


 それはさておき、今回はちゃんと時計のエネルギーについてお話したいと思います。


 前回でもちょっとお話したとうり、機械式時計のエネルギー、つまり機械式時計の動力パワーは、ゼンマイと錘(おもり)の2種類がほとんどです。


 それがどんなものかは、大半の方は、もうお分かりでしょうが、一応、下図に画像を示しました。




手作り時計のJHA 時計作家 ks の時計ブログ-パワー

























 云うまでも無いことですが、ゼンマイのパワーは巻いてあるゼンマイを中心に向かって巻き上げ、その反発でゼンマイ板が解けるエネルギーを利用して動力歯車を廻すものです。


 もう一方は、動力歯車の中心軸に錘の垂れ下がった紐などを巻きつけ、錘が重力で下に引っ張られるエネルギーを利用して動力歯車を廻すわけです


 もちろん、どちらの方法で機械式時計を作っても立派に機能してくれますが、それぞれ長所と欠点があります。

 

 手軽さでいうと、やはり錘で廻す方がいいですね。私もこれまで作った機械式時計は、どちらかというとこの錘の方式のものを沢山作りました。


 錘方式の方が、より古~い感じがして、魅力的です。 でもこの欠点は、やはり錘が下に垂れて行くわけですから、必然的に時計本体の下にスペースが必要になってくる。掛時計なら問題ありませんが、テーブルクロックとして作るのは、殆ど不可能に近いですね。


 どうしても床などに置いて設置したい場合は、長い足の付いたスタンドなんかを作らねばなりません。つまり、製作が比較的簡単ではありますが、どうしても時計本体の下の方向に一定のスペースが必要になってしまうわけです。


 その点、ゼンマイは省スペースで、置時計としても製作できます。ただ、もちろん手作りするためにはゼンマイを自分で巻いて製作しなくてはならず、ゼンマイを手で巻き上げるためには、動力と反対方向に巻き上げなければならないので、どうしてもクラッチを作らなければなりません。


 ですから、ゼンマイ方式は、錘方式に比べると、製作するのは比較的、難しいですね。


 錘の方式も、動力歯車の軸を手で巻き上げる場合は、ゼンマイ方式同様、クラッチ機能を仕込まねばならないのですが、別の方法で、つまりクラッチを仕込まないで製作することも出来ます。その方法は後述します。


 さて、この2つの方式で、どちらがより強いパワーを発するかといえば、やはりゼンマイです。もちろんゼンマイ板の厚さや巻き数によっても違いますが、ゼンマイの方が錘より強いパワーを生じてくれますので断然いいですね。


 錘方式だって、より重い錘をかければ、それだけ強いパワーが得られるんじゃないの・・・・と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、それはまァ、そうなんですけど、あまりに重い錘を掛けると、動力歯車の軸に非常に強い負担が掛かりすぎてしまい、へたをすると軸が曲がってしまったりして壊れてしまうこともあるんです。

 

 また、壁に掛けたりする際にも、かなり頑丈に壁に据え付けなければ、下に落ちてしまう危険性も増してしまうのです。ですから、錘の重さもある程度の限界があります。


ですので、この両方式も色々と、長所や欠点があります。

 

 ちなみに、機械式の腕時計の動力は、もちろんゼンマイでなければなりません。腕時計は当然腕に巻いて使用するわけですし、懐中時計だとしても、もちろん持ち運ぶわけですから、錘を垂らして動力にするなんてことは出来ませんよね。

 

 ここでは、ゼンマイ方式はさておき、主に錘方式による時計を作るという前提で話を進めてゆきたいと思います。


 原始的だけど、どこか情緒のある錘方式の時計は、やはり魅力的です。


 次回は、この錘方式の時計をもっと掘り下げて行きたいと思います。