最近は本当に読書から遠ざかった生活をしているのだけど、久しぶりに行った本屋で何気なく本棚を見ていると、なんと私の大好きな、完結したと思っていたシリーズの、続編が出ているじゃないかっ!!
くま弁シリーズの続編!
東京から札幌に転勤になった会社員の千春と、千春の行きつけのお弁当屋さんの店員ユウ。彼らをとりまく様々な人たちの、あたたかい連作シリーズ。
ほのぼのとしていて、だけど軽くなりすぎない人物の描写、会話のセンス、北海道の四季、おいしい食べ物たち。
『ほかほかごはんの北海鮭かま』から『夢に続くコロッケサンド』までの6冊で、千春とユウの関係性も少しずつ変わっていき、最終巻ではふたりがそれぞれ望む未来、千春の葛藤、ユウの躊躇い…考えて考えて、二人で話し合って決定した、その過程もとてもよかった。
しかし思えば、結婚ってなんだろう・・
働いてて、やりがいもあって、それで自分も子どもも生活して行けるなら、結婚している必要なんてないよね。
…とかうだうだ考えてるのはリアル世界でじゅうぶんだな。
物語の中は優しい、救いのある世界であってほしい。
今作は、主人公が別の女性。
失業中の雪緒が、くま弁で宅配のアルバイトとして働くことになり…という話。全4話。
文章のテンションも読後感も未知数な本は、本当にパワーがないと読めないのだけど(最近特に)、くま弁は安心安全、もうよく知ってるから!
大好きだから!と、知己の人物に会うような気楽さで本の世界に入っていける。
(…いや、リアルな世界で知己に会うのに気楽な気持ちになったことないです、人に会うときはいつも緊張。)
おいしい食べ物が出てくる小説とかコージーミステリは山ほどあるけど、くま弁シリーズは、人と人のかかわり方や、主人公や登場人物たちが相手に思いを馳せるさまが、いいなぁと思う。
こういう、他人とのかかわりの中で、ざらりとする感情味わうことあるなあと思いつつページをめくる。
リアル世界では、他人にそこまでお節介焼かないよ、とか、そこまで深く関わりたくない・関わってほしくない・関わらないほうがいいのかな…の連続で、少しでも齟齬が生じてしまうと関係性が壊れたりして、攻撃したりされたり実際そんなのばかり見てきて嫌になっている。
だからこそ、物語の中の彼らには、考えて考えて、もがいて、苦しんで、行動して、手を差し伸べてもらったら、すこしでも明るい方へ行けるように願う。
ときどきくま弁シリーズ読み返すけど、若菜の出てくる話は、彼女に注目して読んでしまう。
『甘やかおせちと年越しの願い』。
食事が好きじゃなくて、ごはんのときに怒られないかびくびくしたり、少しでも早く終わらせたくて急いで飲み込んだり。
怒られるような隙を作らないよう、機嫌を損ねないよう、無言で目の前にあるものを咀嚼する、飲みこむ、ひたすら繰り返し、終わったら即座に自室に戻る。
私の子どもの頃の食事風景も、そんな感じ。
リビングで家族みんなが集まって団らんとかテレビを見るとか、無い家だった。
若菜にどうしても共感してしまう。
そんな若菜に同情したり慰めたりじゃなく千春が千春らしくうけとめるところが好き。
千春は、ほんといい子だと思う。やさしいし、あったかいし、ある意味ユウよりイケメンだし(言動が)。
「人がいて、色々話してて、それを聞いてるだけでも楽しい」
若菜のこの一言もすごく共感できる。
学生時代のサークルの宅飲みで、人がたくさんいて、しゃべってて、その中にいてつらくない、ずっと楽しい。生まれて初めてそう思った。
私の場合、あの頃が最初で最後だったっぽいけど。
くま弁シリーズ、また続刊でるといいなあ…。