「浜辺」


オリジナル

1
あした浜辺を さまよえば 

昔のことぞ しのばるる

風の音よ 雲のさまよ 

寄する波も 貝の色も



2
ゆうべ浜辺を もとおれば 

昔の人ぞ しのばるる

寄する波よ 返す波よ 

月の色も 星のかげも



3
はやちたちまち 波を吹き 

赤裳のすそぞ ぬれひじし

病みし我は すでにいえて 

浜辺の真砂 まなごいまは





現代語訳

1
朝 浜辺をあてもなく歩いていると

あの頃のことがが なつかしく思い出される


風の音も 雲の様子も あの頃と同じ

浜辺に寄せる波も 貝の色も



夕暮れ 浜辺を歩いていると

あなたのことが恋しくなる

浜辺に寄せる波も 返す波も

月の色も 星の光も 

懐かしい


3
急に吹いた突風は波を吹きあげ

私の着物の赤いすそは
びっしゃりとぬれてしまった

むかし大病を患った私は
今はもうよくなった

浜辺の小さな砂よ

私の小さなあの子は

元気でいるのかしら





大前、シュルレアリスム訳


貝の音を歩く
砂がさみしい

月の色がきこえる
波であいたい