親父 | 竹原慎二 オフィシャルブログ

親父



僕の親父は若かりし頃ギャンブルに明け暮れ多額の借金を背負った

僕が中学1年の時 親父は突然蒸発をし姿を消した


 そして3年後に何事もなかったかのように帰ってきた 


その間 おふくろは借金返済のため夜遅くまで働いていた 


おかげさまで兄と僕は……


ご想像の通りです 



(もしもその辺の話に興味があれば僕が昔 出した「竹原スタイル」を読んでみてください(^^) )


そんな親父も人生の後半は数々の病に苦しんだ


脳梗塞は2回やった 
これは幸い早めに見つけられた


 ステージ4の大腸癌もやり 手術後は腸閉塞も起こした


道端で倒れたこともあった
そこに偶然にも僕の地元同級生 シゲが車で通りかかった 

あれ?竹原の親父じゃねぇか?って気づいて助けに行こうかと思っていると

なんとシャキーンと自力で立ち上がりまた歩いていった


そして数十歩歩くとまたコケた


目の前で起きた光景にあまりに驚いたシゲは心配して僕に連絡をくれた



2013年の年末も後楽園に来て倒れた


広島からおふくろが女房に電話をしてきてお父さんがドームホテルで倒れたみたいなの 様子を見に行ってくれないかというが 女房は新居への引っ越し真っ最中だった

ちょっと今はここを抜けられないし自分が行くよりまずは救急車を呼んだほうがいいんじゃなかといったが親父は絶対に病院には行かないと言い張る 


僕は友人の結婚披露宴に参列中だった  のだが仕方がなく途中抜け出して後楽園へ向かった 



親父は翌日全日本新人王決勝戦に出場する広島竹原ジム 池田の前日計量の付き添いで来ていた



親父は僕が東洋チャンピオンになったころ地元広島でボクシングジムを始めた 現在はそこの元選手だった山道に会長をさせ親父は一線を退いているが



僕がドームホテルに到着すると親父は部屋のベッドで横になって休んでいた


可哀想に計量を終えた池田は飯も食えずに親父の介抱をしていた


いったいどっちが付き添いなんだか 


親父にはフルーツと飲み物を買い 池田とホテルの下で飯を食った



全く人騒がせな親父だ



そして翌日 池田は見事 全日本新人王になった


親父は広島で僕が昔乗っていたお古のマジェスタを運転していた 

あれは世界チャンピオンになった時に買った車だったから それからいったい何年乗っていたのだろう


さすがにもう親父には運転をさせるわけにはいかない 

なんとか説得して車はやっと廃車にした

のちに親父が頻繁に倒れるのは糖尿病による低血糖が原因だとわかった


現在も重度の糖尿病を抱えており一時は血糖値600を越え入院した 
 医者が生きていることが信じられないといったほどだ 

毎日のインスリン注射がかかせずおふくろが行っている 

普通ならもうとっくに5〜6回 死んでないとおかしいのだが親父は不死身である 


この親父が何度も生死の境から奇跡の復活を遂げてくれた姿は僕も勇気や希望をもらった 



なんか僕もたかが癌くらい克服できるんじゃないかって全身からパワーが湧いてくる
 


親父は痛かったり辛かったりする時だけは医者や家族の言うことをききおとなしくしていてくれるのだが 
ちょっと身体が楽になると病室でタバコを吸ったりビールを買いに出かけたり(病院の売店にはすでに通達がいき 親父には何も売ってくれなくなっていた)
挙句の果てに勝手に退院してしまい大騒ぎになった 

困った自由人である 病院ではかなりの要注意人物に認定されている



僕の入院中親父から電話があった


てっきり僕見舞う電話かと思いきや「8月のお盆あたりに広島でボクシングの興業をしよう お前のジムの上林も出場させてくれ 俺は今この歳で体調もあまり良くない 今年が最後になるかもしれん だから頼む」って 
 


おいおい 今こっちも親父以上に生きるか死ぬかの瀬戸際なんだが…



だが親父は一度言い出したらきかない
常識など一切通用しない


上林も広島出身だし一度地元で試合をやるっていうのも本人にとっても悪い話ではない

僕はこれから大手術を控えているから8月に広島までついていけるどうかはわからないけれどいざって時はスタッフと選手だけで行ってもらえばいいか 


それに僕もその日までに人前に出られるように回復するぞという目標にもなる 


そう思って承諾し準備を始めた 



そして僕は退院して1ヶ月後の8月お盆 なんとか広島まで行ってきた
上林も勝った


親父のこの破天荒で強引な行動力 
正直家族や周りは大変だけれど
親父を見ていてこれが親父が不死身である理由に思えてならない



僕は 大病をしてから余計にこれからの人生をどう生きるか深く考えるようになった


常識にとらわれすぎた人生ってのもつまらないと考えたりもする



まぁ親父の場合は極端すぎるけど
自分の人生だからああやって好き勝手に生きる
そういう生き方もあるのかなぁと考えたりする


いや それでもやっぱり僕は絶対に親父みたいには生きられないけど(笑)



自分でいうのも何だか僕の今までの人生もそれなりに波乱万丈で平凡とか常識的なものではなかった


それでもやっぱりこれからもずっともがいたりあがいたりしながら
今まで通り いや 今まで以上に楽しく明るく前向きに毎日を生きていくしかないのだ





つづく






じゃあの。