谷崎潤一郎「細雪」上・中・下巻 | 書評ブログ

谷崎潤一郎「細雪」上・中・下巻

    
著者: 谷崎 潤一郎   
タイトル: 細雪 (上)  タイトル: 細雪 (中)   タイトル: 細雪 下  新潮文庫 た 1-11

 先日の旅行先にも持っていった読んでいたので、ここ3週間ぐらい掛かって読了したということになる谷崎潤一郎の長編小説。鶴子、幸子、雪子、妙子の四姉妹の生活を描いた本作品は、一応三人称で書かれているものの、次姉の幸子が実質的な主人公であって彼女の視点から物語は進んでいきます。関西の蘆屋に住む幸子以下の姉妹たちとは別に、本家として鶴子は東京に住んでいるけれど、物語の大半は蘆屋の三姉妹の数年に渡るどたばた劇が占めています。結局、問題は何かと言えば下の姉妹たちである雪子と妙子が、いい歳であるのに結婚できずに売れ残っていることであり、彼女たちの縁談や自由結婚の世話をする蘆屋の幸子が、本家と分家の姉妹たちの両方の言い分を聞いて板挟みになりつつも婚約を結ばせるために奮闘するというのが、話の大まかな構図。


 時代が少し古いこともあり、さらには四姉妹の家系は蒔岡家としてそれなりに知れた家柄であるため、形式や世間体といったことを、現在では考えにくいほどに気にする傾向があります。その煮え切らない細々した本家と分家のやり取りなどが、実はこの作品の醍醐味であると思うわけですが、発展性のない雪子の態度とかは読んでいてもしかしたら嫌になってくるかもしれません。しかし逆に言えば、失われてしまった日本女性のおくゆかしさとは、どんなものであったのかということを体感することが出来ると思います。


 ちなみに映画化された『細雪』で雪子を演じたのは、なんと吉永小百合。やはりこの人しかいないのかもしれない。というのは作品中でも、何度も強調されているのだけれど、この四姉妹はかなり美人で、歳よりも代ひとつ若く見えるというのが特色であるから、形容の限りを尽くして称えている姉妹訳、殊に雪子に関しては、それ相応の女優をつけるしかなかったのかも知らん。


 伊丹十三も出ているのには驚きました、見るしかない。