マルキ・ド・サド「悪徳の栄え」下巻
- 著者: マルキ・ド サド, 渋澤 龍彦, マルキ・ド・サド
- タイトル: 悪徳の栄え〈下〉
やっと上下巻を読了しました。上巻ではパリでの活動がメインだったジュリエットですが、サン・フォンを気まぐれの美徳によって裏切ってしまったため(美徳が悪の世界なので)、殺されそうなはめになったためイタリアに逃げます。そこでの話がメインですけれど、全編通してやっていることはずっと同じで、放蕩にふけるジュリエットの姿が色々な登場人物と共に描かれてます。
とにかくとっかえひっかえ色々な男女が出てくるわけですが、みんな絶世の美人として描かれているため、一種のドラゴンボール現象(敵がどんどん強くなる)のような状態に陥ってもいます。だから、美人が出てきてもありがたみが読者には全く伝わってきません。それで、だいたいは男も女もジュリエットや他の取り巻きの策略によって殺されてしまうというのがオチです。
かなりパターンが決まっている小説で、物語には違いないですけど、なんだかプロットを読まされているような気になってくるのは、ジュリエットが変態的な案を思い浮かべて協力者にその計画を話すと、ただちに実行されてしまうからでしょうね。計画が実行に至る過程が、かなりなおざりにしか書かれてなくてディティールが少ないから、特に読んでいて吸い込まれるといった感じがないわけです。
それで肝心のサディズムの由来でもある放蕩の内容は、尻に対するフェティズムに溢れてます。「こんな美事な尻はこの世に二つとしてない」みたいな描写で溢れてます。あと、鞭で尻を血が出るまで叩き続けるという描写も多いですね。この二つがかならずセットで出てきます。あと、下巻の中盤以降からは何をしながら、その相手を拷問によって殺すというのがデフォルト設定になるのも特筆でしょうね。アホみたいに皆殺されていきます。特に残酷な表現や苦しむ声とかは出てこないので、案外さっぱりしてますが膨大な量の人間が次々に死にます。だけど、最後の最後で一人の孤児に加えられた虐待は、他の話とは段違いでむごたらしかったです。このテンションでずっと続いていたら、読了は不可能だったと思えます。
最後にこの話はエロティックな小説というよりも、サド侯爵による思想書といった側面が強い小説であるような気がします(というか他人の思想を剽窃しまくっている)。「神なぞは無知蒙昧な人間による産物で、自然は美徳よりも悪徳を奨励する」といった内容が彼の主張だと読み取れます。あと剽窃していることはわかりますけれど、元ネタが誰のかわからない自分が嫌になってくる小説でもあるわけで、もう少し勉強しないとなと思いました。
参考になりそうなサイト
2つのサド観
サド Marquis de Sade
↑サドのことを「現実に数多くの性的虐待を実行し」と書いてあるけれど、実際はそうでなかったような話を読んだ覚えがあります。(確認したらやっていたみたいです)
サド侯爵と見る「マルキ・ド・サドのジュスティーヌ」
↑ジュリエットの妹ジュスティーヌの映画。写真があるので、美人のイメージが沸きますね。
決して文章は読みにくい小説ではないですけど、なんといっても長くて(それでもこの上下巻は完訳ではなくて抄訳なので原作の1/3ほど)どの話も似ているというのが辛いところです。ジュリエットが悪徳の限りを尽くすわけですけれど、サディスティックな発言をしてみると、読み続けるうちに読者が最後に期待するようになっているのは実はジュリエットの無残な死なんではないでしょうかね?