川上弘美「センセイの鞄」

- 著者: 川上 弘美
- タイトル: センセイの鞄
読了。川上弘美の本は始めてなのだけれど、ちょっと惹かれる題だったので買ってみました。夏目漱石の「こころ」でも意識しているんじゃないかなと思わせるタイトルです。そんで読んでみたら、冒頭も似たような出だしでした。しかし、文章は当然現代風。ネットで調べてみたら、結構彼女のインタビュー記事が発見できたんだけれど、芥川賞も取っているから、固い文章を書くのかと思いきや、そうでもなかったです。ちなみにこの「センセイの鞄」で谷崎潤一郎賞を取っています。
内容は高齢であるセンセイこと松本春綱に、彼の教え子であった主人公の大町月子さんが恋をしてしまうというもの。飲み屋でたまに会っているうちに、会話をしだすようになって、いつの間にか連れ立って旅にまで行く仲になってしまう過程を四季の移り変わりとともに描写しています。独身女のホンワカ生活に突如現れたセンセイが、彼女の感情を少しずつ揺さぶり、最後は付き合うことになるんですけど、とにかく酒と食べ物が大半を占めていると言っても過言ではない小説です。川上弘美自身が食べ物の描写が好きらしく、読んでいると腹が減ってくる小説でもあります。
だけど読んでいて、何か知っている話だなと思ったらこのテレビ版をちょっと見ていたからでした。それに気が付いてからは、どうしてもキョンキョンのイメージが染み付いてしまった主人公のツキコさんでしたけど、飲み屋が主な舞台のためか彼女は頻繁にトイレに行くわけですよ。村上春樹の「やれやれ」みたいな頻度で「用を足すと、気が楽になった」みたいな描写が結構多くでてくる。だけど、この時だけはキョンキョンが用を足しているイメージを抱くのがいやで、どうしても川上弘美の姿を引っ張りだして読んだりしてました。まぁ、読み進んでいくうちに、ツキコさんは誰の姿からも独立した人物像になりましたけど、どうしても「用を足す」という書き方から感じる臭気を頭から追い払うことが出来ないでいたら、いつの間にかセンセイにその臭気が染み付いてしまって、彼が臭い老人のイメージになってしまいました。我ながら、とんでもない読み方だと思うけど。
最後の終わり方は大方予想が付いたけれど、ホロリと来てしまうんだな、これが。谷崎潤一郎賞を取っているから、彼の作品と比較するけれど、谷崎的な男女の騙しあいというものはゼロに近いです、この作品は。強いて挙げるなら同窓会で再開した同級生とちょっとした仲になりますけど、彼の存在のおかげでセンセイとの接近がさらに深まるといった具合で、かなりストレートな話だと思います。その分短いラストがいい味を出しているとも言えると思いました。
ちなみに実家に帰ったら、川上弘美特集号の文藝があった。結構どうでもいいインタビューも載っていたりするけど、昔の彼女の写真とかも大量に載ってた。結構自信あるんだろうな。それと、この号に綿矢りさの「蹴りたい背中」があったので、つでにそれも読みました。次の書評は彼女で決定。
川上弘美のリンク集
BOOKアサヒコム
ほぼ日刊イトイ新聞
作家の読書道
ググルとたくさんでてきますので。