阿部和重「グランド・フィナーレ」 | 書評ブログ

阿部和重「グランド・フィナーレ」

著者: 阿部 和重
タイトル: グランド・フィナーレ

 

 もう単行本になって発売されている、芥川賞を取った阿部和重の作品。文芸春秋で買いましたけど。ネタバレの危険があるので、これから読もうかという人は、この書評は見ないほうがいいと思います。どうでもいい話だけれど、大学の図書館でこの作品の掲載されていた群像12月号を借りて読もうとしたら、雑誌は一日しか借りれないということで、途中まで読んでいたにも関わらず結局借りなかったです。文芸誌はもう少し貸し出し期間を伸ばしてくれないと、読むことが出来ないと思うんだけどな。


 作品の内容ですが、さんざん書かれてますけど、これはペドフィリアの主人公がちーちゃんという自分の娘の親権も職も失ってしまったため、田舎に帰るという話。実家に帰って親の文房具店を手伝うという生活をし始めているうちに、町の「芸能祭」なる催しのための演劇の指導を頼まれることになった主人公は、いやいやながらも、二人の少女亜美と麻耶の強い要望を断りきれずに彼女たちの演技指導をし始める。二人の少女は、片方が引越しすることになったために演劇を成功させて、「最後」の思い出を作ることに懸命になっており、その姿に主人公は過去の過ちに対する認識を強めていく。


 前半が、主人公の犯してしまった少女たちに対する犯罪行為の描写にあてられていて、後半は田舎での少女二人への演劇指導をする場面が描かれてます。亜美が引っ越すことになった理由は、彼の兄がトキセンターでトキを逃がし警備員を殺してしまったということで、これは『ニッポニアニッポン』の内容がここで出てきたりします。ちなみに、この話全体が『シンセミア』のサイドストーリー的な位置づけであるらしいですが、まだ『シンセミア』を読んでいないのでなんとも。あと亜美と麻耶に関して「ダブルユーじゃないの疑惑」が持ち上がってたみたいですけど、ここの記事によれば違うみいたいです、以下引用。


月曜日くらいから店頭に並んでいる文藝誌「群像」の最新号に阿部和重芥川賞受賞記念インタビューが載っているのですが、その中で聞き手の佐々木敦氏が『グランド・フィナーレ』に出てくる双子みたいな少女は辻希美と加護亜依のダブルユーの事ではないか?そして、「グランド・フィナーレ」って2人の卒業の事じゃないの?執筆時期も重なるし、と聞いていました。対して阿部氏は、ずっと前に小説構想してる時から、すでに双子みたいな少女を出そうと考えていたのでダブルユーとは関係なく偶然とのこと、でも、卒業コンサートは行きましたよと答えていました。

 文芸春秋で買ったことによる特典は、選評が読めることだと思いますけど、村上龍が案外鋭い指摘をしています。「危険なモチーフの割りに毒がなくて最後まで安心して読めるのは『グランド・フィナーレ』の最大の欠点である」っていうのは、作家にとってかなり痛い一言だと思う。モチーフを生かせてないということだし、掘り下げ切れていないということだろうから。自分も研究会でいつも言われている気がします、あのお方に。ちなみに石原慎太郎は選評を「不毛の時間」と言ってましたが、石黒達昌がちょっと気になったみたいです。