三島由紀夫「音楽」 | 書評ブログ

三島由紀夫「音楽」

音楽
著者: 三島 由紀夫
タイトル: 音楽

 

 三島由紀夫の作品群でも異色作と評されている『音楽』。精神医の汐見和順が、フロイトによる学説などを駆使しながら弓川麗子の治療をしていくというもの。三島自身も一時フロイトやユングに親しんでいたらしいことが、澁澤龍彦の解説に書かれています。サスペンス的で推理小説のような、少し娯楽志向な内容で、三島の遊び心が見られるというような解説だけれど、かなり個人的には面白かったです。「音楽」が指し示すものは本編の中で意味合いが二転三転しますが、最終的には麗子の「オルガスムス」を表すものであり、これが聴こえないため彼女は色々と悩むわけだけれど、この女がかなり曲者で、精神的なダメージによる葛藤から虚言癖を持っておて、治療者である汐見をかなり手こずらせます。最終的には、ある決定的な事件の記憶を彼女が封印していたことがわかり、それを隠蔽するための言動や行動の数々であったことがわかってきます。


 エディプス・コンプレックスやフロイトの「言い間違い」学説などを駆使していて、精神分析にかなり三島が傾倒していた具合が伺える作品だけれども、それらの学説に対する批判的な態度も汐見は見せることがあって、これは作者の本音が出ている部分でもあると澁澤は言ってます。とにかく彼の解説が秀逸だから、引用しまくってしまいました。