マルキ・ド・サド「悪徳の栄え」上巻

- 著者: マルキ・ド サド, 渋澤 龍彦, マルキ・ド・サド
- タイトル: 悪徳の栄え〈上〉
澁澤龍彦の翻訳です。SMのサディズムはこのサド侯爵の名に由来するわけですけれど、それだけあってかなり作品の内容もSMしてます。人の心臓を張形(水牛の角や鼈甲(べつこう)などで陰茎の形に作った淫具)の代わりにして楽しんだり、妊娠した少女たちを孕ました本人が快楽のために堕胎させるといった話であります。で、既に上記の内容からお分かりだと思いますが、この本では人が殺されまくります。ジュリエットという少女が主人公であるわけですが、彼女が幼少期からだんだんと堕落して悪徳だけを神であると崇めるようになる成長の過程が本作品の主な流れになってます。彼女は大臣であるサン・フォンと知り合うことで、どんな罪を犯しても有罪にならない手段を手に入れることになるため、とりあえず快楽のために人を殺すようになります。さらに殺人によって逆に快楽が生じるようになることを期待したりと、もうやりたい放題のジュリエットが描かれているわけです。
後半はロシア人の巨人が出てきて、彼の住む洞窟で放蕩にふけるジュリエットですけれど、このあたりから幻想小説じみてきたます。ちなみにここではカニバリズムも登場します。巨人は人間しか食べないということで、結局ジュリエットも少女の肉を食べることになるわけです。このあたりは『ジェローム神父 ホラー・ドラコニア少女小説集成』の中に似たような場面が描かれてあります。というかこの『悪徳の栄え』に出てくる話の数々は、突飛なものばかりですけど、描写が足りないせいかあまり想像を掻き立てるものではありません。その分あまりグロテスクな感じも受けないわけですけれど、それじゃあ物足りないと思う人には会田誠の絵と一緒に読むことをお薦めします。ちなみに僕はあまりグロテスクなものが好きではないので、この小説の描写でも充分ですけど、会田氏の絵画は見ていてもそこまで嫌な気はしませんね。たぶん少女たちが笑顔だからだと思いますけど、これらの絵がすべて少女たちの苦悶の表情で描かれていたら、結構きつい作品になるでしょうね。ここで幾つか彼の絵を見ることができます。
まあ、こんな感じの話が永遠と続く小説ですけれど、これも澁澤のあとがきによると逆の意味での教養小説という風に位置づけることができるということでした。最近ではサドの作品も再評価され始めているようですし、これから頑張って下巻を読もうかと。

- 著者: マルキ・ド サド, Donatien Alphonse Francois de Sade, 渋沢 龍彦, 会田 誠
- タイトル: ジェローム神父