吉田修一「パーク・ライフ」 | 書評ブログ

吉田修一「パーク・ライフ」

 

著者: 吉田 修一
タイトル: パーク・ライフ

 芥川賞受賞作という帯の触れ込みに引かれて読んでみました。いきなり村上龍の芥川賞選評を引用してしまう。


 「何かが常に始まろうとしているが、まだ何も始まっていない」という、現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかな、あるのかどうかさえはっきりしない希望のようなものを獲得することに成功している


 ということで、仰々しい感じで表題の「パーク・ライフ」のことだけを指しているのなら、ちょっと褒めすぎのような気もする。話は電車の中で知らない女に話しかけてしまったことで始まるわけだけれど、その後彼女となんとなく仲良くなってしまい、公園で昼休みを一緒に過ごすという村上春樹っぽい雰囲気漂う内容。スターバックスという固有名詞がしつこく出てくるのだけれど、別に話の上でこれといった大事な機能を果たしているわけでもなく、気まぐれでやっている感じがしました。春樹を模倣するための気まぐれ感なんだろうけれど、いまいちぱっとしないと思いました。「フランスパンにスモークサーモンを挟んで黒胡麻をかけて食べた」という描写なんかは、いかにも春樹的な「ぼく」がやりそうなことだけれど、どうも嫌らしい印象が残ってしまうよ。

 

 それに対して、もう一つ収録されている話である「flowers」はかなりよかったです。都会に出てきた夫婦の話で、主人公である夫が配送会社で肉体労働に勤しむというプロレタリア文学のような内容。同級生であった同僚「永井」に八つ当たりする社長というパワーハラスメントが横行する不条理な世界で淡々と「元旦」という名の男の部下として主人公は毎日運搬作業に精を出します。しかも元旦は永井の妻を寝取ってしまうし、さらに嫌われ者である社長にもその女を紹介したりもしている。その上で、主人公、元旦、永井は酒を一緒に飲みながら生花をしたりする仲でもあったりします。


 最後で大きな山場を向かえて、永井は不条理から脱するわけですが、村上龍の選評はこの作品の方が当てはまっている気がしました。

 

 ちなみに吉田修一は文壇で一番のイケメンということになっているらしいです。