「金字塔」
という言葉をご存じでしょうか。
三省堂の大辞林 第三版によると
「後世に永く残る立派な業績。
偉大な作品や事業」
と説明されています。
そしてそこに記載されている
もう一つの説明にはこうあります。
「『金』の字の形の塔。
ピラミッドをいう」
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ピラミッドの四角錐の形の
その先端の一点の高さは、
高いものでは140mもの高さ
(30~40階建てのビルに相当)
となります。
そして、その一点は、
決して宙に浮いた一点ではありません。
地上に堅固な土台を築いた上で
何層もの石を積み上げていった、
その頂点の一点なのです。
人が成し遂げていく仕事の成果。
それもまた
ピラミッドのようなもの
なのかもしれません。
数え切れないほどの
努力を積み重ね、
多くの事を成し遂げていくことで、
ようやくその頂点となる場所に、
一つの功績を
積み上げることができるもの。
そして、
人がこの世に残す、
はるか高い場所にある、
「後世に永く残る立派な業績。
偉大な作品や事業」
それは、
はじめからその形で、
その場所に、
生み出されたものではない。
そういうものですからね。
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この人の人生は、
人類の科学の発展という
金字塔
を創り上げていったものでした。
まだ女性が科学者になることに
偏見のあった時代に、
夫とともに
放射性物質の研究に取組み、
「放射線を放出して
放射性崩壊を起こす性質」
を
「放射能」
(radioactivity)
このような現象を起こす元素を
「放射性元素」
(radioactive substance)
と命名。
さらに
激しく放射線を放出する新元素
ポロニウム、
そして
ラジウム、
を発見した功績から、
1903年のノーベル物理学賞、
1911年のノーベル化学賞を受賞し、
パリ大学初の
女性教授職に就任した、
マリ・キュリー
(1867~1934)
日本では
「キュリー夫人」
として有名な彼女の言葉を、
今回はご紹介していきます。
【若き日のマリ・キュリー】
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"A great discovery does not issue from a scientists brain ready-made, like Minerva springing fully armed from Jupiter’s head; it is the fruit of an accumulation of preliminary work. "
「偉大な発見は、
- ミネルヴァがジュピターの
頭から完全武装して
出てくるみたいに (*) -
既にできあがった形で
科学者の頭脳から
現れるわけではありません。
それはそこに至るまでの
研究の積み重ねから生まれる
果実なのです」
(マリ・キュリー)
(*)
ミネルヴァはローマ神話に登場する
智恵や戦争の女神。
ジュピターはローマ神話の主神で
ギリシア神話のゼウスにあたる存在。
人類に多大な恩恵をもたらした、
マリ・キュリーの放射線に関する
発見・発明の功績もまた、
空中に浮かぶ、
光り輝く一点ではなく
まだ見ぬ真理を
探し求める研究を積み重ねた
何十もの層からなる、
「金字塔」
であったといえるでしょうし、
その何十もの層を
築き上げていくための研究は、
"I was taught that the way of progress was neither swift nor easy."
「進歩というものは
迅速でも容易でもない
ということを私は学びました」
この言葉の通り、
彼女自身の人生をかけた
膨大な時間と労力と
引き換えになされたもの
だったのでしょう。
ただし、
マリは決して
自己犠牲の精神だけで
研究に励んだ
わけでもないようです。
"All my life through, the new sights of Nature made me rejoice like a child."
「私の人生を通して、
自然界における新しい景色は
私を子供のように楽しませました」
彼女が築いた金字塔を
ささえた土台は、
「自分の好きなことをやる」
という気持ちであり、
純粋に
自分が選んだ仕事を愛し、
楽しみながら続けた、
その積み重ねが
人類の科学の発展に
大きな貢献をする研究結果となった
・・・そういうものだったのかも
しれませんね。
そして
"You cannot hope to build a better world without improving the individuals.
To that end each of us must work for his own improvement, and at the same time share a general responsibility for all humanity, our particular duty being to aid those to whom we think we can be most useful. "
「私達一人ひとりが
改善していかなければ
素晴らしい社会の建設など
不可能なのです。
各々が人生を切り開きながらも
同時に社会の役に
立っていなければなりません。
人々の力になること、
これは人類の共通の
義務なのです」
地上にある、
「自分の仕事を愛し楽しむ」
という堅固な土台と、
はるか上空の一点にある、
「科学の発展と人類の幸せのために」
を目指す理想。
この二つが
同時に存在したことが、
「初期の原子核物理学、
そして社会学・医学や生物学の面
において21世紀の世界にまで
影響を与える大きな貢献」
という
偉大な金字塔を
彼女が創り上げることを
可能にした大きな要因
・・・といえるのでしょうね。
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"Nothing in life is to be feared, it is only to be understood.
Now is the time to understand more, so that we may fear less."
「人生の中で恐れるものなど
一つもありません。
すべては理解されるものです。
そして私たちの恐れが
より小さくなるように、
今、さらに理解を深める時なのです」
1867年ポーランドのワルシャワに
生まれた
マリア・スクウォドフスカ
後のマリ・キュリーの人生もまた、
ここではご紹介しきれないほどの
強い光と深い闇が
大きく交錯するものでした。
それでも、
貧困も、不幸も、社会的非難も、
自分自身の健康問題さえも、
彼女の歩みを止めることは
できませんでした。
"Life is not easy for any of us.
But so what?
We must have perseverance and above all confidence in ourselves.
We must believe that we are gifted with something and that this thing must be achieved. "
「人生は私たちの誰にとっても
容易ではありません。
だけど、それがどうしたの?
私たちは忍耐力を持ち、
とりわけ自信を
持っていなければなりません。
私たちは天から
何かを与えられていると信じ、
その何かに到達しなければ
ならないのです」
マリ・キュリーが亡くなってから
60年後の1995年、
その業績を称え、
マリと夫のピエールの墓は
パリのパンテオンに移され、
二人はフランス史の偉人たちの中に
列されました。
マリがその人生で
築き上げた金字塔は、
彼女を
女性初のノーベル賞受賞者、
女性初のパリ大学教授、
とし、さらにその死後
彼女をパンテオンに祀られる
初の女性にもしたのでした。
【パリのパンテオン】
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人生、なかなか思うようには
いきませんよね。
試練は次から次に、
押し寄せてくるものかも
しれません。
それでもそこで流されず、
じっと耐えながら、
自信を持って前に進むこと。
自分が好きだと思える何かを、
それが
天が授けてくれたものと信じて、
貫き通すこと。
そしてその先に、
自分が貫き通す理想をかかげ、
見つめながら、
そこに到達することを目指して
自分のなすべきことを
ひたすら積み上げていくこと。
それが
私たちが人生において
なすべきことであり、
世のため人のためにできること。
恐れて悩んだり、
迷っている暇なんて
ありませんね。
私たちも、
自分にしか築くことのできない
金字塔
創り上げていきましょう!!
【マリ・キュリーが生まれたワルシャワの現在】
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ここからアクセス!/過去の名言集記事 (# 231~# 240)
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【注記】
ポーランドで生まれ、フランスで活躍した
マリ・キュリーの残した言葉は
フランス語、もしくはポーランド語
のはずですが、
それでも今回、日本語と共に
英語の表現を併記しているのは、
日本語よりは、
本人の語った言葉のニュアンスが
より近い形で反映されているのでは・・・
と考えた上のことです。