時は流れ、星は移り、
世の中が変わって、
誰の眼にも
もはやその道に先はないことは
明らかだったとしても、
自分が正しいと信じた道、
自分が貫くと決めた筋、
「節義」
を貫き通した男の生き方。
それは、
時に愚かしくも
哀しくも見え、
もしかしたら彼が
かかげたその正義さえ、
歴史から見たら、
正しいものとは
言えなかったかもしれない
としても、
どこか
潔さ、儚さ、清々しさを
我々に感じさせて
くれるかもしれません。
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はじめ京にきた時には、
幕府、天朝などという頭はなかった。
ただ攘夷のさきがけになる、
というだけであった。
ところが行きがかり上、
会津藩、幕府と縁が深くなった。
しらずしらずのうちに
その側へ寄って行ったことであったが、
かといって今となって
こいつを捨てちゃ、男がすたる。
近藤さん、
あんた日本外史の愛読者だが、
歴史というものは変転してゆく。
その中で、
万世に易らざるものは、
その時代その時代に節義を守った男の名だ。
新撰組はこの際、
節義の集団ということにしたい。
たとえ
御家門、御親藩、譜代大名、旗本八万騎が
徳川家に背をむけようと弓をひこうと、
新撰組は裏切らぬ。
最後のひとりとなっても、裏切らぬ。
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維新前の京の都を震えあがらせた
「新撰組」
その鬼の副長。
己の信じる道を貫き通し、
北の大地に儚く散っていった男。
土方歳三・・・。
私の個人的な思いですが、
あの坂本龍馬が、
史実以上に「龍馬」
に感じられるのが、
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」、
そして、
土方歳三が、
史実以上に「土方」
に感じられるのが、
司馬遼太郎著「燃えよ剣」
です。
今回は特別編として、
小説 「燃えよ剣」の中での
土方歳三の名言を紹介していきます。
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総司、見てくれ。
これは刀である。
刀とは、工匠が、
人を斬る目的のためのみ
作ったものだ。
刀の性分、目的というのは、
単純明快なものだ。
兵書とおなじく、敵を破る、
という思想だけのものである。
しかし見ろ、
この単純の美しさを。
刀は、
刀は美人よりもうつくしい。
美人は見ていても心はひきしまらぬが、
刀のうつくしさは、
粛然として男子の鉄腸をひきしめる。
目的は単純であるべきである。
思想は単純であるべきである。
新撰組は節義にのみ生きるべきである。
人は、常に悩み、恐れます。
この道は正しいものなのか?
この道の先に、
自分の未来は本当にあるのか?
それは、
色々なものを秤にかけて、
難しく物事を考えすぎて、
失敗を恐れて、
の結果かもしれませんし、
もちろん、
それが間違っているとも思えません。
土方は他人事のように
薄ら笑いを浮かべてこう言いました。
なあ総司、おらァね、
世の中がどうなろうとも、
たとえ幕軍が全部敗れ、降伏して、
最後の一人になろうとも、やるぜ。
この男の、
自分が信じた道、
「こっちに向かって進む」
と一度決めた道を、
迷うことなく
ひたすら前に進む。
たとえ自分がその道を進む
最後の一人となっても・・・。
そういう生き方、考え方は
私たちの心の中に
たとえ浮かんだとしても、
決して選ぶことはできない、
そして
決して選ぶことのない
選択肢なのかもしれません。
だからこそ、
私たちの心に
響くのかもしれませんね。
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新選組副長が参謀府に用がありとすれば、
斬り込みにゆくだけよ。
(函館での最終決戦、
ただ一騎で官軍の参謀府に向かう、
土方歳三の最期のセリフ)
【土方歳三 最後の決戦の舞台、函館五稜郭】
あれほどの男です。
もちろん時代の流れは、
彼の目も
とらえていたでしょう。
それでも、
たとえ、
自分自身が激流に逆らう、
小さな石ころに過ぎない、
そうわかっていたとしても、
最後まであきらめないで、
自分の命を
たった一つの使命のためだけに
燃やし尽くした生涯。
たとえ他人から見たら
愚かなものに見えたとしても、
自分の価値観、
自分がすべきことを
シンプルにそして明確に設定し、
自分が選んだその道を
他人にどう見えようと
他人になんと言われようと、
迷うことなく前進し続ければ、
それが他人には真似できない
エネルギーをうみ、
ことは成し遂げられていく。
そのことは、
覚えておいてもいいかもしれませんね。
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賛否はあると思います。
彼の生き方、価値観、
ものの考え方が
必ずしも正しいとも、
私も同じような人生を
生きたいとも、
また
生きられるとも思いません。
だけど、
人生、
うまくいくことばかりでは
ありませんよね。
正直言って、誰にでも
逃げ出したい局面は
たくさんあると思います。
そんな
思い通りいかない人生の中で、
ここぞという時には、
己の退路を断って、
自分自身を鼓舞し、
勝利を信じ、
心折れることなく、
自信と信念と勇気
をもって、
真っ直ぐにその道を進んでいく。
そうすれば、
私たちの人生は、
より良いものにしていかれる
かもしれませんよね。
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