ケーススタディーを続けます。
【境界確定】
①故人は婿として農家の家督を継ぎ、都市開発が進む中でも頑なに土地の売却を拒み、相続財産のほぼ全てが土地であった。
しかも周囲、隣接土地開発への協力もしなかったためにインフラへの接続が困難であり、しかも隣接する住宅地との境界確定に同意が必要とされる地権者の数が膨大となっていた。
相続人は仕事の拠点を県外山梨に移しており、境界立会のたびに千葉に戻る生活を強いられた。
時代はバブル崩壊後で、実勢価格と路線価(相続税評価)の逆転現象も一部でみられた。
(取組)
・土地を路線価地域(市街化区域)と調整区域(倍率地域)に分け、市街化区域について実勢価格と路線価との乖離を確認し、実勢価格が路線価を上回っている土地に関しては売却、それ以外は物納の方針を確認
・市街化区域の土地に関しては全て境界確定をすることとした
大きく4つのブロックに分かれた規模の大きな土地は隣接者の数が優に50名を超えていた
・4つのブロックに分かれた土地のうち実勢価格が路線価を上回ったのは1箇所のみ。残り3つは物納の手続きを進めることとした
・当時6ヶ月の申告、納税期限に境界確定の業務は当然間にあわなかった
あわせて袋地もあり、その土地に関しては追加で接道の確保の為の土地交換の交渉業務が必要となった
また一部に地図混乱地域もあり、公図に存在しない第三者所有地の存在の主張もあり、地図訂正の作業も加わった
土地の境界の確定は困難を極めた
(結果)
この相続人が相続税の納付(物納を含む)を完了するまでに5年を要しました。
しかも物納した土地を国税庁が公売した後に地中に埋設物が見つかり、その瑕疵担保の補償で500万円を購入者に支払い終えるのに更に2年程の時間を浪費させられました。
それから更に2年後、不幸にして相続人にがんが見つかり半年後に逝去されました。
次の相続の開始です。
家族はお話しされました。
「相続でがんになり、死んだ」と。
(学び)
不動産の割合の多い相続に備えるには土地の境界の確定は必須
想定より境界確定業務には多くの時間を要する場合があり、現在であれば隣接者が高齢であったり相続が未了の場合も少なくないのでなおさら
不動産の所有と境界確定は一体不可分と肝に銘じる必要がある
【成年後見】
②80代の故人はクリスマスの早朝5時に自転車に乗っていたところバイクと衝突、死亡。
相続人は3名でその内の故人の配偶者は介護施設に入所中で意思能力を失っていた。
相続財産は一体整形の土地一画、その上に自宅、アパート、休耕中の畑が存在していた。
相続税の納付が不可避なのは土地の大きさから明らか。
また納税資金の捻出のために土地の一部処分はもちろんだが、事故の相手側の保険会社から示談を急かされていた。
(取組)
・土地の境界確定を相続税のアウトラインが見える前に着手。隣接者は17人
・税理士は当社の顧問にお願い
・保険会社が求めてきている補償支払いのための示談交渉の対応、
酷い話で意思能力を失った配偶者の印鑑登録と実印の押印を相続人の子に提案してきた
成年後見人を立てて法律行為を合法的に行うよう手配。知人の弁護士に受託頂いた
・土地の処分にあたって自宅の敷地の一部を含む内容であったため、裁判所の配偶者の相続分に対応する部分について裁判所の許可を求めた
・アパートの敷地についても処分が必要な状況となり、入居者がある状態での購入者を探索
(結果)
・土地の境界確定はスムーズに相続発生から3ヶ月で完了、売却処分する検討や分筆を早期に始められた
・成年後見人の選任は2ヶ月弱要したが無事知人の弁護士が受任し、内容を説明し、スピード感を持って対応頂いた
・保険会社との示談交渉も成年後見人からの連絡で提示額から一気に500万円の上積みとなった
・申告期限までの納税資金が確保できた
・道路沿いの相続人の一人が住む自宅は兄弟で共有とし、それ以外の不動産は売却して二次相続の備えとした。
(学び)
・保険業者の示談交渉のデタラメさ
・成年後見人の選任事務の煩雑さ
・境界確定を早く終わりにすることで、その後の分割に基づく購入者の探索、自宅の一部の裁判所の許可など余裕を持って取り組める