相続のお手伝いには未経験の様々な問題が起きました。

勉強しながら、解決するお手伝いを必死でしてきました。

振り返り、改めて考えてみますといくつかに困難な問題の要素が分類ができました。

最たる大きな難題は、問題を把握する、あるいは実感するための時間が短かすぎるということです。

少ない時間の中で、普段関わったことのない大きの作業(税務申告・金融機関・不動産業者・弁護士・測量業者)を、誰に託すかからを決めなければならなくなります。

当然将来に対する不安の中で選択の正しさに対しての自問自答のストレスにさらされ、勢い他の相続人に対する疑心暗鬼に陥りやすくなります。

 

当初関わった頃には相続税の申告期限は6ヶ月でした。

平成4年(1992年)にやっと10ヶ月に延長され、現在も変更されていません。

もちろん基礎控除、配偶者控除、特例の改変はなされたものの、10ヶ月という期間は変わらず、手続きの慌ただしさはお手伝いする側も含めて当事者を苦しめます。

相続税法によれば、相続税の納付が必要と計算された場合、申告期限までに申告と相続税の納付を一括、金銭によって行わなければなりません。

それが行えない合理的な理由がある場合のみ、延納と呼ばれる分割払いや物納と呼ばれる金銭以外の方法での納税が認められます。

あくまでも一括、金銭での納付が原則です。

 

以下はケーススタディーの一例です。

 

【修羅場】

 

①30年近く前に親父に言われて親戚の葬儀に向かいました。

 自宅葬でした。

 寒い冬の夕刻、車を近隣に止め庭に設置されたテントで受付を済ませ焼香に玄関に向かいました。

「焼香しなくていい」の30代の喪主の怒号と「悔しい〜」叫ぶ50代の女性二人。

 「これが『争族』か」、衝撃を受けた私にとっての初めて体験でした。

 通夜当日の争いはこれが最初で最後です。

 

 後から聞くと農家で、喪主から見てお婆さんのご葬儀だったのですが、お父さんを早く亡くしており母親が嫁として故人の看護しながらし、家業の農家を喪主と継承していたようです。

トラブルを避ける意図で、喪主に遺産である土地の大半を残すような遺言を残していたとのこと。

「嫁が残った場合」の典型的かつ深刻な相続トラブルを目の当たりにしました。

 

②故人には三人のお子さんと認知症で施設に入所された配偶者がありました。

 故人は生前私に

 「長男は病弱にもかかわらず酪農の手伝いで大学にもやれず苦労させた。次男と長女は学校にもやれたし、家を残してやったので他は全て長男に残したい」

 私は、

 「私にいくらそのような話をしても仕方がないので遺言をしてください」

 

 その後故人も体調を崩され、私が直接お話しする機会がなく逝去。

 

 亡くなってから公正証書遺言を私にお話しした通りの内容で作成してあった事を知りました。

 

 相続の全体イメージは次のようなもので遺言書は次男と長女の遺留分を完全に侵害したものでした。

 ・不動産と現預金の割合は7対3で、現預金では相続税に不足する。従って土地の処分は不可避

 ・配偶者の遺言書も公正証書で作成済みであり、今回の遺言同様長男にほとんどの財産を相続させる内容

 ・土地の確定測量は私のアドバイスで生前に大半を完了している

 

 相続の申告業務のための長男から税理士の紹介を依頼され当社で紹介しました。

 ところが次男、長女と一悶着

 ・川島不動産の紹介の税理士には不満。税務申告はそれぞれが行う

 ・遺言を破棄して協議分割がよい

 

 ご長男に迷いがあるように見受けられましたので私から次のようにアドバイス。

 ・土地の処分が相続税の納税のために不可避であるため、遺言の通り不動産を分割し、納税資金分の土地は処分しないと納税期限に間に合わない

 ・遺留分以上の相続財産をご兄弟に約束し、遺留分減殺請求(当時、現在は民法改正により遺留分侵害額請求)を行うようお話ししてほしい

 

 タッチの差でした。

 

相続財産のうち公用徴収される土地を処分したところで次男から内容証明による遺留分減殺請求と相続財産を独断で処分することを禁止するとの意思表示。

もちろん2019(令和元)年7月1日以後の相続から適用される遺留分侵害額請求以前の相続でしたのでこれ以上の不動産の処分はできなくなりました。

 

結果ご長男には土地のみ、ほとんど現金は残らない形での分割で決着。

相続の申告もご長男の申告書を丸々コピーして納税。

ご兄弟の話し合いにも私が立ち会わせていただきましたが、後味の悪い寂寞とした印象でした。

 

遺留分を侵害した遺言を作成したばかりに御兄弟が疎遠となっていくのがつらかったです。

もちろん侵害していなければ円満だったとも思っていませんが…