写真のパウロ・コエーリョのアルケミストを読みました。
きっかけはカルロス・ゴーンのコラムだったと思います。
小説は 久し振りですが良いです。
次の一説がかなり強く残りました。

父親に「世界で最も賢い男から幸福の秘密を学んで来るように」言われ、旅に出た少年の話。

 

賢者は注意深く、少年がなぜ来たか説明するのを聞いていたが、今、幸福の秘密を説明する時間はないと、彼に言った。そして少年に、宮殿をあちこち見てまわり、2時間したら戻ってくるようにと言った。
「その間、君にしてもらいたいことがある」と、2滴の油が入ったティー・スプーンを少年に渡しながら、賢者は言った。「歩きまわる間、このスプーンの油をこぼさないように持っていなさい」
少年は宮殿の階段を登ったりおりたりし始めたが、いつも目はスプーンに釘付けだった。2時間後、彼は賢者のいる場所に戻ってきた。
「さて、わしの食堂の壁に掛けてあったペルシャ製のつづれにしきを見たかね。庭師のかしらが10年かけて作った庭園を見たかね。わしの図書館にあった美しい羊皮紙に気がついたかね?」と賢者が訪ねた。
少年は当惑して、「実は何も見ませんでした」と告白した。彼のたったひとつの関心事は、賢者が彼に託した油をこぼさないようにすることだった。
「では戻って、私の世界のすばらしさを見てくるがよい。彼の家を知らずに、その人を信用してはならない」と賢者は言った。
少年はほっとして、スプーンを持って、宮殿を探索しに戻った。今度は、天井や壁にかざられたすべての芸術品を鑑賞した。庭園、まわりの山々、花の美しさを見て、その趣味の良さも味わった。賢者のところへ戻ると、彼は自分の見たことをくわしく話した。
「しかし、わしがお前に預けた油どこにあるのかね?」と賢者が聞いた。
少年が持っていたスプーンを見ると、油はどこかへ消えてなくなっていた。
「では、たった1つだけ教えてあげよう」とその世界で1番賢い男は言った。「幸福の秘密とは、世界の全てのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ」

 

味わい深いです。

 

 

 

川島魂2017年10月26日(川島 慎一)