結弦くん関連の情報が続き、毎日浮かれている私ですが、日々急速に世界情勢は変わっているようです。
遂にシリアのアサド政権が崩壊しました。
「アラブの春」から13年、父子2代にわたって50年以上続いていた独裁政治にやっと終止符が打たれたわけです。
私も何度かシリアについて書いてきましたが、今回の争いも結局は欧米とロシアの代理戦争だったんですよね。
13年前、独裁政権に対し反乱軍が蜂起した際、それを支援して空爆を仕掛けたのは確かフランスなどのヨーロッパの国々でした。
もちろん、ヨーロッパの国々が単独で他国を空爆するのも考えにくいので、当然アメリカも裏で噛んではいたんでしょう。
それらの攻撃でシリア政府が追い詰められたとき、政府軍に加勢したのがロシアです。
そのロシアの圧倒的な戦力によりシリア政府軍は息を吹き返し、今に至ってきたわけです。
その頃の私は、この戦争もいつものように中東の資源を争う戦いだと思っていたのですが、実際にはもっと問題は複雑でした。
というのも、シリアを支配下に置くことで、ロシアはシリアの海軍基地と空軍基地を支配下に置くことに成功していたからです。
地中海に面するタルトゥース海軍基地にはロシアの軍艦が停泊しているわけですが、この地中海に面した基地を手に入れることで、ロシアは中東やヨーロッパ、果ては中東諸国にも睨みを利かせることが出来るようになっていたということです。
そこを失うというのはロシアにとって大打撃です。
世界情勢というのは本当に複雑で、今回の急襲は多くのことが複雑に絡まり合って動いたことでした。
まず、ロシアがウクライナに手こずっていてシリアに目を光らせることが出来なくなっていたこと。
ウクライナに侵攻した当初から、協力すると思われていたベラルーシが全く協力せず、傭兵部隊は反乱を起こし、唯一残ったチェチェンのカディロフもロシア内部での自分たちの待遇に不満を抱いて反乱状態になっているそうです。
遂には北朝鮮の兵士まで投入したのに北朝鮮兵はあまり役に立っていないという話も聞きますし、現在ロシアの軍事力はかなり弱体化しているというのが正しいのでしょう。
ロシアはタルトゥース海軍基地やフメイミム空軍基地から艦艇を撤退させつつある様ですが、これで地中海沿岸部への影響力はほぼ失うかたちになるのではないでしょうか。
シリアの反乱軍が急に勢力を盛り返してきたのはロシアの影響だけではありません。
イスラエルがレバノンに侵攻したことでシリアの国境を封鎖していたヒズボラがレバノンに戻り、国境が手薄になったこと。
シリア政府と仲の良かったイランがイスラエルと険悪になったことでイランにシリア介入の余力がなくなったこと。
まあ、私は中東情勢の専門家ではないので本当にざっくりしか分からないのですが、この動きを機にイスラエルはシリアのゴラン高原(現在はイスラエルが実効支配)に侵攻し手中に収めようとしているとも言われていますし、この辺りの国々は、その思惑も国境線も曖昧で簡単に理解できることではありません。
もしイスラエルが侵攻せず、このままシリアの内戦が終結したとしても、シリアから争いが消えるかどうかも分かりません。
というのも、中東の国々はどこもかしこも小さな部族で構成されていて、国よりも部族の首長のほうに権力があるからです。
今回も複数の部族、複数の宗教派閥が入り乱れて政府軍と闘っていたみたいなので、内戦終結後に部族同士の戦いになるかもしれません。
そこは本当に、戦国時代の侍のように見栄やプライドの塊のような人々なので、まとめるのも至難の業ということです。
そういった勢力を上手くまとめて欧米諸国が力を貸せば復興は早いかもしれませんが、こういう国はだいたいイスラム教の原理主義者たちが外国の影響を廃しようと動くものです。
トルコのように近代化するかイランのように原理主義が勢力を伸ばすか、それは本当に分かりません。
日本人の私たちから見れば、トルコのようにイスラム教を信仰しつつも緩やかな近代化を進めて欲しいと思うわけですが、パキスタンやアフガニスタンのように昔ながらの生活で国民が満足している国もあります。
私は結構Bappa SyotaさんのYouTubeを見るのですが、このパキスタンの動画を見て色々考えることがありました。
私たちも20数年前にパキスタンに旅行に行ったことがありますが、動画を見た感じその頃と全く変わりません。
本当にパキスタンはこんな感じです。
でも、この生活は不幸なのかと問われたら、私にはこたえることが出来ません。
幸せというのはその土地の文化とか宗教観によって変わるので、この国の人達が笑顔でいられるなら自殺が多発する日本より精神的には幸せなのかもしれないな…と思う部分もあるのです。
欧米化が必ずしも人間にとっての幸せなのかと問われたら、そうじゃないかもしれません。
最近の、ネットで人を叩いて小金を稼ぐような社会は幸せな世界なのだろうかと考えると、パキスタンの方が健全なのかもしれないなと思う部分もあるからです。
なので、シリアの未来はシリア国民のものと、そう私は考えることにしています。
独裁者がいなくなっても、そこに残る人間が全員無欲というわけではないので、必ず諍いは起こるからです。
以前私は「自国民に銃を向ける指導者は必ず不幸な結末を迎える」というようなことを書いたことがあるんですが、ロシアは、もう利用価値のなくなったアサドを歓待するでしょうか。
私はそうは思っていません。
まあ、アサドの未来がどうなろうと知ったこっちゃありませんが、言えるのは
「最初はどんなに優れた指導者であったとしても、長く権力の座にいると人間は必ずその地位を守る為に反対勢力を迫害するようになる」
ということです。
ここを自覚し上手く権力を移譲していかないと、どんな豊かな国も必ず戦禍に巻き込まれることになります。
シリアの次の政権が、うまく国をコントロールし国民を幸せに導くことが出来ればいいなと、私は遠い国からそれだけを祈りたいと思います。
以上