また少し遅くなってしまいましたが、NHK杯の雑感です。
色々なことを考えていたら支離滅裂になってきてしまったのですが、すぐにファイナルも来てしまうことなので支離滅裂なまま載せてしまおうと思います。



今回のNHK杯は、私達が見ていたよりずっと結弦くんにとって、重くドラマチックで意味のある大会だったようです。


結弦くんは、年々弱くなっています。

それは、人間的な部分でというわけではなく、怪我を繰り返したことによるフィジカルの部分と、それ故に怪我を恐れる深層心理の部分、それとファンやスポンサーが自分に期待しているであろう姿や背負っているものの重さ、それでもその期待に応えたいと思うプレッシャーなどなどで、結弦くんは ソチの頃より確実に弱くなっていると私は思うのです。

跳べるジャンプは増えたしスコアは比べようもないほどに伸びています。
全然強くなってるじゃんと思うかもしれませんが、そういう問題ではないのです。

もう昔のように怪我をしてもがむしゃらに突っ走ることはできなくなっているということなのです。



結弦くんは怪我をしすぎてきたのです。
さらに多くの経験を積んできたことで、様々な蓄積が結弦くんの無鉄砲な行動にセーブをかけます。

もう、恐れを知らない子供ではいられなくなっているのです。



結弦くんは以前から何度も、9歳の頃の「無敵のユヅル」の話をしていますよね?(笑)

子供は世界を知らないし限界も知らないから、自分は何だって出来ると根拠の無い自信に満ち溢れているものなんです。

身体も軽く大人より痛みも感じないため恐れを知りませんし、望んだことは全てできますしね。

それが大人になるに従って、人間には出来ることと出来ないことがあることを学び、無理をしたら怪我をすることを学び、色々なしがらみが自分を覆い尽くすことを知り、全てを全開でやるのは無理だということを痛感していくのです。


知能に少し難があって、学ぶことができない人は9歳のまま夢を持って生きられるかもしれませんが、それでも何でも出来るわけではないんです。

人間であれば、至る所で妥協をし、挫折をし、子供の頃手にしていた物のいくつかを、もしくはほとんどを手放して生きていくわけです。

結弦くんも、ここに来るまでは練習場所を失い、怪我も繰り返し、多くの苦難を乗り越えてきているわけですが、9歳の「無敵のユヅル」は自分にそんなことが起こることすら知らないんです。

知らないからこそ無敵なんです。


でも、たとえ現実が厳しくても、結弦くんは多くの人達の力を借りて着実に夢をかなえてきています。
それは普通の人間には充分凄いことなんですけど、9歳の小ユヅの「なれる」と思っていた姿からはまだまだ遠いんでしょうね。

どんだけ凄い自分を妄想していたんだよと、ちょっと小ユヅの首根っことっ捕まえてじっくり話を聞いてみたいものです(笑)



それでも、小ユヅを失うことなく自分の中に宿していられる結弦くんは幸いです。

きっと、沢山の映像が残っているため、いつでも小ユヅの頃に戻ることができるんでしょうね。

普通の人間なら、子供の頃の自分なんて大人になるに従って消えてしまうんですから。


私は、子供の頃の自分を常に心に宿しているのは結弦くんと本田圭佑氏しか知りません。
でも、きっと夢を掴むためにはその小さな自分を失っちゃいけないってことなんですね。


真っ直ぐで何も恐れない小ユヅの判断はいつだって一番の真理です。
小ユヅがキャプテンであれば、必ずその船は最初の目的地にたどり着くのです。

それは、ルフィをキャプテンにしている「麦わらの海賊団」みたいなものです。
打算もなく駆け引きもなく、ただひたすら夢を追う姿こそ、多くの人間を惹きつけるのです。





ショートのとき、他の選手がことごとく4Tでミスをしていたので氷が硬いのはすぐに分かりました。
リンクサイドのお客さんの姿も皆さん重装備でしたから、会場が全体に寒かったんでしょう。


以前、あっこちゃんも言っていましたが、硬い氷は着氷時に氷にはじかれることがあり、ソフトに降りるように気をつけなくてはならないそうです。

でもそれは3回転の話。

4回転となると跳び上がるためのトゥは刺さらないし着氷の衝撃は凄いしで、皆さん4Tに大変難儀をされているようでした。

結弦くんは調整力の高い選手ですからきちんと決めてきていましたが、翌日の公式練習でも絶不調だというレポを目にし、氷が硬いのはそこまで調子を狂わすのかと驚いていたわけです。


でも、違ったんですよね。
結弦くんは、GPSの公式練習で怪我をするんじゃないかと、怖くて怖くて、ジャンプが跳べなかったんですよね?


フリー。

曲がかかる前、結弦くんの足が動いていたのを見て、最初は氷が硬くてエッジが滑るのかな?と思っていました。

でもニュースなどで流れる別角度の映像で脚全体が動いていたのを見て、これはとんでもない緊張状態にいたのかも、と思うようになりました。

ポジションにつく前に、肩や首を回したら緊張している証拠というのは以前から知っていましたが、こんなに結弦くんが緊張していたことがかつてあったでしょうか。

それが、闘志溢れる武者震いなのか、怪我の恐怖に立ち向かわなくてはいけない震えなのかは分かりませんが、あの時の結弦くんは確かに極度の緊張状態にあったのだと思います。

その中での4Loは、僅かに着氷を堪えたもののクリーン。

次のサルコウは美しくアウトサイドエッジに乗った見事な着氷。

綺麗にアウトサイドエッジに乗れば、体は斜めになってフリーレッグも美しく伸びるのです。
あのサルコウに2しかつけなかったジャッジには、私が「髪の毛が5本抜けても2本しか生えない呪い」をかけておきますね!プンプンプンプン!


そして後半のリカバリー。

この時点では既に結弦くんのアドレナリンも全開で、冷静に計算しつつも恐怖や緊張は吹っ飛んでいたのかもしれませんね。

そのリカバリーですが、実を言うとそれほど挽回はできていないんですよ。


予定構成とスコアはこうなる予定でした。(後半1.1倍)

4T+1Eu+3F→16.83P
3A+3T→13.42P
3A+2T→10.23P
合計40.48P

3本のコンボを後半固め撃ちすることで3点以上のボーナスもつき、えげつない高得点を叩き出す構成です。


でもそれが実際にはこうなりました。

2T→1.43P
4T+3T 14.15P
3A+1Eu+3S 14.08P
合計29.66P

意外と点数は伸びないのです。



4Tの点数は後半1.1倍して10.45点、2Tは1.43点です。

リカバリしないでそのままの構成をこなしていたら、コンボの点数の16.83 が1.43になって40.48点が25.08に減っていました。

それをリカバリすることで29.66まで押し上げたのですが、実際には4.58点のアップに過ぎません。

以前もリカバリでどれ程点数がアップするものなのか計算したことがあったのですが、その時も意外と点数は取り返せないことに驚いたものでした。

点数が出た時、観客から歓声が出なかったことについて、結弦くんは自分が皆さんの期待に応えられなかったと言っていましたが、きっと現地にいたファンは、あんな素晴らしいリカバリをしたんだからもっと点数が出るだろうと思っていたんじゃないでしょうか。

それが「え?こんなに低いの?」という困惑だったんじゃないかと思うんですけど、そもそも4Tが2Tになってしまった時点で確実に基礎点で8点、後半ということを考えれば約9点は失ったのです。

リカバリのために3Aを犠牲にしましたしね。

回転不足のマイナスや3Fと3Sの点差も含めると、トータルで12~3点は失ったように思うので、まあ、あの点数は致し方なしです。

ミスをした時点で200点は難しいのは判っていましたが、まあ、あと2点くらいはGOEがついても良かったかな~という感じでしょうか



結弦くんの場合、ほとんどMAXの構成で組んでいますから、リカバリしても一発逆転は難しいです。

それでも、すぐに対応できるその能力の高さはさすがですよね。

私は、結弦くんの凄さは「いつでもどんなジャンプでも瞬時に跳ぶ事ができる」部分にあると思っています。

ジャンプって、軌道から進入動作から全てが違うじゃないですか。
それを瞬時に組み替えることが出来るというのは誰にでも出来ることじゃありません。

どんなジャンプでも、みんなそのジャンプを反復練習で身につけるわけじゃないですか。
そんな、それぞれに個性のあるジャンプを簡単には並び替えられないのが普通なのに、結弦くんにはそれが普通にできるんですよね。

3A+1Eu+3Sは以前やっていたから身についているわけですが、それを簡単に再現して見せるところは、記憶力の良さも必要になってくるわけです。

過去プロをいつでも演じることが出来るその記憶力もまた、結弦くんの素晴らしい能力のひとつなんじゃないかと私は思うわけです。



ぶっちゃけると、2位の選手との点差を考えれば、スコア的、勝敗的にはリスクを冒してあんなリカバリをする必要はなかったと思います。
それをやら なければ負けるというような点差じゃなかったんですから。

それでもやるのは最高の自分を目指しているからなのか…と思っていたら、どうやら観客へのサービスというか(笑)みんなに盛り上がってもらいたかったからのようですね。


始まる前はあんなに緊張していたのに、後半では観客に楽しんでもらうことを考えていたのですからそのメンタルには驚かされるばかりですよ。


結弦くんは心理学なども学習してると言っていました。
メンタルをコントロールするという意味ではアスリートにも心理学は十分生かせるわけで、ただ漫然と練習してるだけの選手では到達できない場所に、結弦くんは辿り着きつつあるのかもなあとちょっと驚いているところです。


あとは「ノーミスしたい」という「欲」から離れることが出来れば、その時こそ「究極の羽生結弦」になれるのかもしれません。


結弦くんはジンクスを重んじる人ですから、過去のGPSで2戦続けて「公式練習で大怪我をした」というのは本当にプレッシャーになっていたんでしょうね。

過去にも、確かニースワールドの時も前日の練習で捻挫をしていたんじゃなかったかと思いますが、どうしても「公式練習で怪我をする」というのが悪いイメージとして残っていたのかもしれません。



かつて中国杯で衝突事故を起こし、そのトラウマを心配されたにもかかわらず、その3週間後には「ビビッてんな、自分」と笑いながらそのトラウマを 乗り越えていった結弦くんです。

そんな強いメンタルの結弦くんですら、2年続けてGPSの前日練習で酷い怪我をしたのはトラウマになるわけです。

そんな苦しみを推し量ることもせず、仮病だのズル休みだのと言っていた人達には、大好きなものを食べると腹を壊す身体になるという呪いをかけておきたいと思いますねてへぺろ



そして、今回のNHK杯で特筆したいのは、結弦くんの活躍に影響を受けた選手が一線に上ってきたということでした。

ロシアのマカール・イグナトフくんは2年前のJGPFで日本に来て、エロホフくんと一緒にファイテンのミラーボールを買っていた羽生ガチ勢です(笑)

先シーズンの試合の記録がないところを見るともしかしたら怪我などで長期離脱をしていたのかもと思ったら、本当に怪我をしていたようですね。
そのイグナトフくんも、結弦くんと同じ試合に出られるようになってきっと嬉しかったんじゃないかと思います。

ソータもガチ勢ですが、そういった選手たちがこれからのフィギュアを支えていくのですから、彼らの活躍も結弦くんの活躍とは別の意味で楽しみですね。

スケカナではプルキネンくんがガチだと言っていましたし、これからの男子フィギュアには結弦くんを見てフィギュアを始めた勢も増えて来るんだと思います。


私、結弦くんを見ていると、ファンの方々には怒られるかもしれませんが「僕のヒーローアカデミア」のオールマイトを想像しちゃうんですよ。
(知らない人は検索しないでくださいチュー

本当は満身創痍なのに、みんなの前ではヒーローでなければと、人々に勇気を与えるためにもヒーローであらねばと、そうやって精一杯無理をしているオールマイトを連想しちゃうんです。
(だから画像検索しちゃダメ!)

でも、きっともう世界中に「羽生結弦」に憧れた子供たちがいるんですよ。


15の時からシニアのストロングフィールドに上がっていた結弦くんに追いつくには、ギリギリまでジュニアにいちゃダメなんです。


みんな上がって来いよ!
俺をワクワクさせてみろよ!


かつて身体に無数のメスを入れながら結弦くんとの戦いを楽しみにしていたプルシェンコのように、55点差をつけてなおも「強くありたい」と氷帝は叫んでいるのです。


というわけで、圧倒的強さを見せたNHK杯は、嬉しくもあり切なくもあり、その強さにひれ伏しながらも
「大丈夫だから、頑張れ!」
と、何故か叫びたくなるような、そんな不思議な大会でした。


さあ、すぐにファイナルです。

ごめんねネイサン、なんかロックオンされちゃってるの。

でも、北京まで付き合ってもらうわ~~~!



以上