新シーズンに入り、世間はオリンピックに向けて盛り上がっていくところですが、私はルールの大幅改正が大変気になっています。
GOEの幅を現行の7段階から11段階にするというのは、その点数が何点になるかはわからないうちは評価が難しいですが、ただクリーンに跳んだだけのジャンプと難しい入りから美しく跳んだジャンプに差がつくのであれば、それは歓迎すべきことです。
以前私は、+5が必ずしも5点にはならないんじゃないか?と書いたことがあります。
(その時の記事はこちら)
それでは、コケて-5点され減点1も食らったらトゥループなんか4点しか入らなくなりますから、それだとほとんどダウングレードと同じになり、誰も4回転にチャレンジしなくなるからです。
で、出来栄え点はやはり基礎点の30%くらいまでが適正だと思いますから、私は上限を3点にし、それを5段階に配分するのではないかと思ったのです。
が、ここでまた、今度は4回転の点数が下がることになりました。
ネットに上がっている表を自分が分かりやすいように表にしてみたのですが、まあ、こんな感じで計画をしているようです。
これを見ると、4Aと4Lzの点が大きく減らされているようです。
子供たちが、4回転の空中戦に夢中になり、怪我のリスクが増えたため、ヒートアップしている現状に水を差したいという感じでしょうか。
とは言え、それが半分建前に過ぎないことは薄々分かります。
だって、子供たちの健康を考えるなら、シニアに上がれる年令を上げ、ジュニアで使える4回転の数を制限すればいいことなんですから。
それをしないで突然点数の削減に動くということは、遮二無二4回転を入れることでスケーティングが疎かになりつつある現状に歯止めをかけるという意味と、ジャンプに特性のあるアジア系の独走をなんとかしたいという、2つの側面があるように思います。
とりあえず、どんなにスケーティングが未熟でも、4回転を増やせば勝てるんだという風潮はマズイので、点数を下げるのは反対ではありません。
ただ、絶対に反対なのは、4回転をミスしたら、クリーンな3回転より点数が下がることです。
上の表の点数でいくと、4Lzの基礎点が13.6から11.5に、2.1点も下がるようです。
対し、3Lzは5.9点です。
この点数で4Lzをコケた場合、もしGOEで5点、ディダクションで1点引かれたら5.5点になり、GOEのついていない3Lzの方が0.4点高くなるわけです。
現行、3LzのGOE+3は2.1点です。
5.9に2.1を足せば8点なので、コケて5.5点になった場合、3回転にGOEが付いた方が点数は確実に上がります。
だったら、ジャンプに自信のない選手は3回転を磨いた方がいいということになるので、やはり新しい+5は3点くらいで見るべきだと思います。
そうすれば、4点引かれても7.5点ですから。
4回転を習得し始めた選手が、そこをどう判断するかはわかりませんが、できれば4回転を外す方向にはいかないで欲しいなと思っています。
しかし、アクセルの点数をまたガッツリ下げましたよね?
アクセルは、どんなにスケーティングを頑張っても苦手な人は苦手なので、これは点数が高くてもいいジャンプだと思うんですけどね。
というか、私はダブルジャンプまで少し下げた方がいいと思っていた人間なので、とりあえず、下げられたのが4回転だけではなく3回転にまで及んでいるのは安心しました。
しかし、それでなくても低いといわれている4Aの点数が更に減らされるというのは解せません!
3Lzが6点で3Aが8.5点なので、現行の点数ではその差が約1.42倍なんですよ。
新しい点数に変わると差が少し縮まりますが、それでも3Lzが5.9で3Aは8点です。約1.35倍の差があります。
それが4回転になったら1.09倍になるってどういうことでしょうね(笑)
この基礎点を見て何が分かるかというと、つまりISUは、4Aを跳ぶなと言っているんですよ。
ISUとしては高難度のジャンプに偏るなといいたいのでしょうが、まだ誰も跳んでいない4Aについてはともかく、4Lzを2.1点 も下げたのは今後物議をかもしそうです。
だって、ルッツってすでに問題なく跳んでいる選手がいるわけじゃないですか。
それを2点以上下げるということは、ありがちな「陰謀論」に流れかねないですよね?
つまり、3Fの点数だけ変更が無かったということで、3連コンボの3rdジャンプに3Fを入れられるショーマが明らかに有利になったわけです。
通常、3rdジャンプには3Sを跳ぶ選手がほとんどです。
これは、1stジャンプの回転を2ndの1Loで止めることが難しいため、そのままの回転を生かせる3Sが1番合理的だからですよね?
3Fはトゥジャンプなので、一度体を止めてトゥを突かなきゃいけないわけですが、すでに回っている回転を止めるのは難しいんです。
ショーマにそれができるのは体が小さく重心が低いからだと思うのですが、他の選手にできないことをやっているため、ショーマの3連にはGOEが多くつくんですよね。
で、予想されるのは、またしても中国のボーヤンファンの不満でしょうね。
3連に入れるのが3Sか3Fかで点差がさらに開いてしまったのに、4Lzは2.1点も下がるんですから。
もちろん、入っているジャンプの本数で、滑る前から勝負が決まってしまうような事態になるのは避けるべきだと思うんですよ。
ジャンプにばかり意識が向くことがあってもいけませんし、怪我のリスクも減らしたいですしね。
なので、高難度ジャンプに制限を設けたい気持ちは分からないでもないけど、この点数が本当にこれで決まりだというのなら、ちょっと
「おいおい、難しいことにチャレンジするのはアスリートの本能じゃないのか?下げるなら一律で下げろよ」
と、私なんかは思うわけです。
これは私が考えていた基礎点ですが、4Tまで容赦なく下げていました(笑)
このくらいやってもいいと思っていたんですが、それでも私は4Aだけは上げてもいいと思っていました。
それほどに難しいジャンプなんですから。
4Aについて、何故ISUが「跳ぶな」と言っているのかというと、たぶん過去に4Aにチャレンジしたことのある選手が皆さん「4Aは他の4回転とは別物。あれは命に関わる」と言っているからだと思うんです。
あのプルシェンコですら着氷した時の衝撃の凄さに、4Aを跳ぼうとするのをやめたと言われていますから、確かにそれに挑戦するのは危険なんでしょう。
でも、ちょっと待ってよ、と私は思うわけです。
それって、昔ながらの高跳び型ジャンプの衝撃だよね?
結弦くんや、一部の選手に取り入れられてきている幅跳び型ジャンプは、横に流れていく推進力で、上から落ちる衝撃は多少緩和されているんじゃない のかな?と。
ここは、私は4回転を跳べるわけではないので偉そうなことは言えないんですが、リスクは跳び方で変わるんじゃないのかな?と思うわけです。
「危険だから跳ぶな」というのはあまりにも短絡的ですよ。
じゃあ、スノーボードのスロープスタイルやハーフパイプは安全?ラグビーは安全?アメフトは安全なの?ってことですよね?
スポーツってそういうものじゃないんですよ。
危険なら、危険じゃない練習方法と大会運営を模索し、それを広めていくほうが先決なんですよ。
簡単にやめろと言うんじゃなくて、ね。
「今模索中だからそれまで待って」と言うなら分かるけど、跳ぶなというのは短絡的過ぎですよね。
オーサーなどは「つまりオールラウンダーを目指せということなんだろうな」と理解してはいるみたいですが、オールラウンダーを目指させたければ、他のエレメンツの基礎点を上げるほうに向かったっていいんですよね?
なんでコレオにハイドロまで入れて基礎点2点なの?
トップ選手でも取りこぼすステップって、レベルをクリアしたら、GOEの点数を倍々で上げていってもいいんじゃないの?
色々な改革はできるはずなんですが、いつもジャンプに終始してしまうのがなんとも不思議なところです。
芸術と技術を分けるという案も、私から見たら単純で短絡的です。
フィギュア界にとってまずい計画は、芸術と技術と、プログラムを2つに分けるというそっちの方だと私は思うんですよね。
「それを変える事でどうしたいのか」が、全く明確じゃないんです。
「これでフィギュアの人気を復活させることができる」と考えているのだとしたら余りにも能天気です。
ISUは、会場に観客を増やしたいんでしょうか。
競技人口を増やしたいんでしょうか。
それとも、スケーターが長く競技を続けられる、そんなスポーツにしたいのでしょうか。
競技人口を増やすのには、かかる費用が少なくならなければ爆発的には増えません。
テレビ放映が増え、世界中の人が見て、子供たちが「自分もやりたい」と考え、それが親たちの収入で賄える費用であれば、競技人口は増えます。
でも、そのためにはまず「競技が魅力的であること」が第一条件になります。
「面白い」ということがあって初めて、観客は会場に足を運び、市民はテレビのフィギュアを見るのです。
スケーターが長く競技を続けるというのも、お金にならなければ長く続ける意味はありません。
趣味のひとつにしたほうが、選手を続けるよりずっとお金はかからないんですから。
スケーターに長く続けて欲しい。
そのためには今の難度は高すぎるから低くしよう。
興奮はしなくなるけど、演技が美しければきっと観客は満足するだろう。
って、ISUはそういう風に思っているのかな?
逆ですよね?
これは、男子がまたバンクーバーの頃に戻りかねない危険性を孕んでいます。
バンクーバーの頃、4回転が減った男子の試合から観客がどんどん減った時代がありましたよね?
スケートファンなら、過去のことは記憶しているはずです。
過去、熱狂的な男子人気があったのはいつですか?
ブライアン対決?
ヤグプル時代?
観客は何に熱狂していたと思いますか?
ジャンプですよね?
完成度を上げた4回転無しより、転倒するかもしれないけどチャレンジする演技に観客は拍手を送るんですよ。
今、少しだけ男子にかつての熱狂が戻ってきたのは、絶対に4回転が大きな役割を担っていると思うんです。
絶対的スケーティング巧者に遮二無二立ち向かうジャンプ小僧達。
ヘルシンキワールドのショートの時、誰も転倒する気配を見せない演技に、みんな鳥肌立てて魅入っていましたよね?
ああいった興奮が無くなってしまったら、何のためにこの数年間、みんなが切磋琢磨してきたのかわからなくなってしまいます。
もちろん、みんながノーミスしても、4Lzを跳ばれたらそれ以下のジャンプしかない選手は、相手がコケるのを期待するしかなくなりますから、あまり点差をつけないというのはアリだと思いますよ。
ジャンプは難易度より得手不得手によるところもありますから、難しさはあの表の通りではありませんからね。
芸術的な要素が疎かにされ、男子はジャンプ合戦になっているという危惧はわかります。
でも、それで男子人気が再燃してきたというなら、つまり観客が男子に求めているのはジャンプだということなんです。
ヒリヒリするような、ちょっとのステップアウトで勝敗が決してしまう、4回転なんですよ。
だって、美しいものを見たいなら女子で十分なんですから。
芸術的な演技を見たいなら女子やカップルの演技を見ればいいんです。
男子は、体も硬く、スピンのポジションも美しくないんです。
そんな男子が今、熱狂して迎えられているのはトップ達の「真4回転時代」にワクワクしているからですよね?
芸術と技術を分けたとしても、結局高難度のジャンプを入れた選手に軍配が上がるだけなんですよ。
賭けてもいいです。
男子のアーティスティックプログラムの方で4回転を無しになんかしたら、観客はテクニカルプログラムしか見ませんよ。
アーティスティックな演技で観客が満足するなら、SOIは毎回満席になっているはずですよ。
テクニカルプログラムの方には、一切の表現を省いてエレメンツオンリーなんでしょうか。
もし、今まで通りの内容で高難度ジャンプが入っているなら、観客がどちらを選ぶかは推して知るべしです。
ISUは本当に、何をしたいのかがブレブレでわからないです。
ベテランが、高難度ジャンプを入れなければまだまだ滑れるというのなら、ベテランが参加出来るジャンプ制限をした競技会を作ればいいんです。
それこそ、参加資格は25歳以上とかにしてね。
ジャンプは5本まで、4回転は1本までとかにしてね。
それが人気を博したら、その時初めてオリンピックなどに入れることを考えるべきでしょう。
でも、今1番問題なのは、何度も書いてきたことですが、高難度ジャンプにジャッジが寛容な点をつけることですよね?
難しいジャンプに挑戦して偉いねと言わんばかりにステップ無しジャンプにプラスをつけるジャッジが、毎回クリーンなジャンプを跳ぶ結弦くんには渋い点をつける。
そうやって偉い偉いとやっていたのに、ある日突然
「あ、ルッツはもう跳べないジャンプじゃなくなったから、ちょっと点数下げるわ」
と言われたら、今ルッツを頑張って練習している選手だってやってられないですよね。
とにかく、GOEの基準を、3回転も4回転も同じにすれば、あの基礎点でもそれほど不具合はなかったはずなんです。
そこはジャッジ達に基準を守るよう周知徹底して欲しいと思います。
後からファン同士で言い争いをすることのないよう「これはダメ」という基準は守って欲しいわけです。
スケートの理想をかなえようとしている選手がいます。
美しいポーズ、早くて正しい姿勢のスピン、正確なステップ、そして高難度ジャンプ。
それらのすべてを音楽に調和させ、一音一音に心を込めて、フィギュアを極めようとしている選手がいます。
そして、その姿を追っている子供たちが、同じように美しいスケーターになりたいと、日々頑張っています。
技術と芸術を分ける必要なんて本当はないんです。
技術も、芸術も、手に入れようとしている選手がいるんですから。
取り敢えず、大きな変革は平昌の後です。
結弦くんが追い求めてきた美しい競技が、また魅力を失うなんてことにならないよう、ISUには熟慮に熟慮を重ねて欲しいと思います。
これから先の子供たちが「昔は良かったよな」なんて言わなくてもいいように、大人たちも
「自分が観客だったら何を見たいか。魅力的な競技とは何か」
を考えて運営し、その上で子供たちが楽しく競技できる環境を整えてやって欲しいなと思います。
以上
GOEの幅を現行の7段階から11段階にするというのは、その点数が何点になるかはわからないうちは評価が難しいですが、ただクリーンに跳んだだけのジャンプと難しい入りから美しく跳んだジャンプに差がつくのであれば、それは歓迎すべきことです。
以前私は、+5が必ずしも5点にはならないんじゃないか?と書いたことがあります。
(その時の記事はこちら)
それでは、コケて-5点され減点1も食らったらトゥループなんか4点しか入らなくなりますから、それだとほとんどダウングレードと同じになり、誰も4回転にチャレンジしなくなるからです。
で、出来栄え点はやはり基礎点の30%くらいまでが適正だと思いますから、私は上限を3点にし、それを5段階に配分するのではないかと思ったのです。
が、ここでまた、今度は4回転の点数が下がることになりました。
ネットに上がっている表を自分が分かりやすいように表にしてみたのですが、まあ、こんな感じで計画をしているようです。
これを見ると、4Aと4Lzの点が大きく減らされているようです。
子供たちが、4回転の空中戦に夢中になり、怪我のリスクが増えたため、ヒートアップしている現状に水を差したいという感じでしょうか。
とは言え、それが半分建前に過ぎないことは薄々分かります。
だって、子供たちの健康を考えるなら、シニアに上がれる年令を上げ、ジュニアで使える4回転の数を制限すればいいことなんですから。
それをしないで突然点数の削減に動くということは、遮二無二4回転を入れることでスケーティングが疎かになりつつある現状に歯止めをかけるという意味と、ジャンプに特性のあるアジア系の独走をなんとかしたいという、2つの側面があるように思います。
とりあえず、どんなにスケーティングが未熟でも、4回転を増やせば勝てるんだという風潮はマズイので、点数を下げるのは反対ではありません。
ただ、絶対に反対なのは、4回転をミスしたら、クリーンな3回転より点数が下がることです。
上の表の点数でいくと、4Lzの基礎点が13.6から11.5に、2.1点も下がるようです。
対し、3Lzは5.9点です。
この点数で4Lzをコケた場合、もしGOEで5点、ディダクションで1点引かれたら5.5点になり、GOEのついていない3Lzの方が0.4点高くなるわけです。
現行、3LzのGOE+3は2.1点です。
5.9に2.1を足せば8点なので、コケて5.5点になった場合、3回転にGOEが付いた方が点数は確実に上がります。
だったら、ジャンプに自信のない選手は3回転を磨いた方がいいということになるので、やはり新しい+5は3点くらいで見るべきだと思います。
そうすれば、4点引かれても7.5点ですから。
4回転を習得し始めた選手が、そこをどう判断するかはわかりませんが、できれば4回転を外す方向にはいかないで欲しいなと思っています。
しかし、アクセルの点数をまたガッツリ下げましたよね?
アクセルは、どんなにスケーティングを頑張っても苦手な人は苦手なので、これは点数が高くてもいいジャンプだと思うんですけどね。
というか、私はダブルジャンプまで少し下げた方がいいと思っていた人間なので、とりあえず、下げられたのが4回転だけではなく3回転にまで及んでいるのは安心しました。
しかし、それでなくても低いといわれている4Aの点数が更に減らされるというのは解せません!
3Lzが6点で3Aが8.5点なので、現行の点数ではその差が約1.42倍なんですよ。
新しい点数に変わると差が少し縮まりますが、それでも3Lzが5.9で3Aは8点です。約1.35倍の差があります。
それが4回転になったら1.09倍になるってどういうことでしょうね(笑)
この基礎点を見て何が分かるかというと、つまりISUは、4Aを跳ぶなと言っているんですよ。
ISUとしては高難度のジャンプに偏るなといいたいのでしょうが、まだ誰も跳んでいない4Aについてはともかく、4Lzを2.1点 も下げたのは今後物議をかもしそうです。
だって、ルッツってすでに問題なく跳んでいる選手がいるわけじゃないですか。
それを2点以上下げるということは、ありがちな「陰謀論」に流れかねないですよね?
つまり、3Fの点数だけ変更が無かったということで、3連コンボの3rdジャンプに3Fを入れられるショーマが明らかに有利になったわけです。
通常、3rdジャンプには3Sを跳ぶ選手がほとんどです。
これは、1stジャンプの回転を2ndの1Loで止めることが難しいため、そのままの回転を生かせる3Sが1番合理的だからですよね?
3Fはトゥジャンプなので、一度体を止めてトゥを突かなきゃいけないわけですが、すでに回っている回転を止めるのは難しいんです。
ショーマにそれができるのは体が小さく重心が低いからだと思うのですが、他の選手にできないことをやっているため、ショーマの3連にはGOEが多くつくんですよね。
で、予想されるのは、またしても中国のボーヤンファンの不満でしょうね。
3連に入れるのが3Sか3Fかで点差がさらに開いてしまったのに、4Lzは2.1点も下がるんですから。
もちろん、入っているジャンプの本数で、滑る前から勝負が決まってしまうような事態になるのは避けるべきだと思うんですよ。
ジャンプにばかり意識が向くことがあってもいけませんし、怪我のリスクも減らしたいですしね。
なので、高難度ジャンプに制限を設けたい気持ちは分からないでもないけど、この点数が本当にこれで決まりだというのなら、ちょっと
「おいおい、難しいことにチャレンジするのはアスリートの本能じゃないのか?下げるなら一律で下げろよ」
と、私なんかは思うわけです。
これは私が考えていた基礎点ですが、4Tまで容赦なく下げていました(笑)
このくらいやってもいいと思っていたんですが、それでも私は4Aだけは上げてもいいと思っていました。
それほどに難しいジャンプなんですから。
4Aについて、何故ISUが「跳ぶな」と言っているのかというと、たぶん過去に4Aにチャレンジしたことのある選手が皆さん「4Aは他の4回転とは別物。あれは命に関わる」と言っているからだと思うんです。
あのプルシェンコですら着氷した時の衝撃の凄さに、4Aを跳ぼうとするのをやめたと言われていますから、確かにそれに挑戦するのは危険なんでしょう。
でも、ちょっと待ってよ、と私は思うわけです。
それって、昔ながらの高跳び型ジャンプの衝撃だよね?
結弦くんや、一部の選手に取り入れられてきている幅跳び型ジャンプは、横に流れていく推進力で、上から落ちる衝撃は多少緩和されているんじゃない のかな?と。
ここは、私は4回転を跳べるわけではないので偉そうなことは言えないんですが、リスクは跳び方で変わるんじゃないのかな?と思うわけです。
「危険だから跳ぶな」というのはあまりにも短絡的ですよ。
じゃあ、スノーボードのスロープスタイルやハーフパイプは安全?ラグビーは安全?アメフトは安全なの?ってことですよね?
スポーツってそういうものじゃないんですよ。
危険なら、危険じゃない練習方法と大会運営を模索し、それを広めていくほうが先決なんですよ。
簡単にやめろと言うんじゃなくて、ね。
「今模索中だからそれまで待って」と言うなら分かるけど、跳ぶなというのは短絡的過ぎですよね。
オーサーなどは「つまりオールラウンダーを目指せということなんだろうな」と理解してはいるみたいですが、オールラウンダーを目指させたければ、他のエレメンツの基礎点を上げるほうに向かったっていいんですよね?
なんでコレオにハイドロまで入れて基礎点2点なの?
トップ選手でも取りこぼすステップって、レベルをクリアしたら、GOEの点数を倍々で上げていってもいいんじゃないの?
色々な改革はできるはずなんですが、いつもジャンプに終始してしまうのがなんとも不思議なところです。
芸術と技術を分けるという案も、私から見たら単純で短絡的です。
フィギュア界にとってまずい計画は、芸術と技術と、プログラムを2つに分けるというそっちの方だと私は思うんですよね。
「それを変える事でどうしたいのか」が、全く明確じゃないんです。
「これでフィギュアの人気を復活させることができる」と考えているのだとしたら余りにも能天気です。
ISUは、会場に観客を増やしたいんでしょうか。
競技人口を増やしたいんでしょうか。
それとも、スケーターが長く競技を続けられる、そんなスポーツにしたいのでしょうか。
競技人口を増やすのには、かかる費用が少なくならなければ爆発的には増えません。
テレビ放映が増え、世界中の人が見て、子供たちが「自分もやりたい」と考え、それが親たちの収入で賄える費用であれば、競技人口は増えます。
でも、そのためにはまず「競技が魅力的であること」が第一条件になります。
「面白い」ということがあって初めて、観客は会場に足を運び、市民はテレビのフィギュアを見るのです。
スケーターが長く競技を続けるというのも、お金にならなければ長く続ける意味はありません。
趣味のひとつにしたほうが、選手を続けるよりずっとお金はかからないんですから。
スケーターに長く続けて欲しい。
そのためには今の難度は高すぎるから低くしよう。
興奮はしなくなるけど、演技が美しければきっと観客は満足するだろう。
って、ISUはそういう風に思っているのかな?
逆ですよね?
これは、男子がまたバンクーバーの頃に戻りかねない危険性を孕んでいます。
バンクーバーの頃、4回転が減った男子の試合から観客がどんどん減った時代がありましたよね?
スケートファンなら、過去のことは記憶しているはずです。
過去、熱狂的な男子人気があったのはいつですか?
ブライアン対決?
ヤグプル時代?
観客は何に熱狂していたと思いますか?
ジャンプですよね?
完成度を上げた4回転無しより、転倒するかもしれないけどチャレンジする演技に観客は拍手を送るんですよ。
今、少しだけ男子にかつての熱狂が戻ってきたのは、絶対に4回転が大きな役割を担っていると思うんです。
絶対的スケーティング巧者に遮二無二立ち向かうジャンプ小僧達。
ヘルシンキワールドのショートの時、誰も転倒する気配を見せない演技に、みんな鳥肌立てて魅入っていましたよね?
ああいった興奮が無くなってしまったら、何のためにこの数年間、みんなが切磋琢磨してきたのかわからなくなってしまいます。
もちろん、みんながノーミスしても、4Lzを跳ばれたらそれ以下のジャンプしかない選手は、相手がコケるのを期待するしかなくなりますから、あまり点差をつけないというのはアリだと思いますよ。
ジャンプは難易度より得手不得手によるところもありますから、難しさはあの表の通りではありませんからね。
芸術的な要素が疎かにされ、男子はジャンプ合戦になっているという危惧はわかります。
でも、それで男子人気が再燃してきたというなら、つまり観客が男子に求めているのはジャンプだということなんです。
ヒリヒリするような、ちょっとのステップアウトで勝敗が決してしまう、4回転なんですよ。
だって、美しいものを見たいなら女子で十分なんですから。
芸術的な演技を見たいなら女子やカップルの演技を見ればいいんです。
男子は、体も硬く、スピンのポジションも美しくないんです。
そんな男子が今、熱狂して迎えられているのはトップ達の「真4回転時代」にワクワクしているからですよね?
芸術と技術を分けたとしても、結局高難度のジャンプを入れた選手に軍配が上がるだけなんですよ。
賭けてもいいです。
男子のアーティスティックプログラムの方で4回転を無しになんかしたら、観客はテクニカルプログラムしか見ませんよ。
アーティスティックな演技で観客が満足するなら、SOIは毎回満席になっているはずですよ。
テクニカルプログラムの方には、一切の表現を省いてエレメンツオンリーなんでしょうか。
もし、今まで通りの内容で高難度ジャンプが入っているなら、観客がどちらを選ぶかは推して知るべしです。
ISUは本当に、何をしたいのかがブレブレでわからないです。
ベテランが、高難度ジャンプを入れなければまだまだ滑れるというのなら、ベテランが参加出来るジャンプ制限をした競技会を作ればいいんです。
それこそ、参加資格は25歳以上とかにしてね。
ジャンプは5本まで、4回転は1本までとかにしてね。
それが人気を博したら、その時初めてオリンピックなどに入れることを考えるべきでしょう。
でも、今1番問題なのは、何度も書いてきたことですが、高難度ジャンプにジャッジが寛容な点をつけることですよね?
難しいジャンプに挑戦して偉いねと言わんばかりにステップ無しジャンプにプラスをつけるジャッジが、毎回クリーンなジャンプを跳ぶ結弦くんには渋い点をつける。
そうやって偉い偉いとやっていたのに、ある日突然
「あ、ルッツはもう跳べないジャンプじゃなくなったから、ちょっと点数下げるわ」
と言われたら、今ルッツを頑張って練習している選手だってやってられないですよね。
とにかく、GOEの基準を、3回転も4回転も同じにすれば、あの基礎点でもそれほど不具合はなかったはずなんです。
そこはジャッジ達に基準を守るよう周知徹底して欲しいと思います。
後からファン同士で言い争いをすることのないよう「これはダメ」という基準は守って欲しいわけです。
スケートの理想をかなえようとしている選手がいます。
美しいポーズ、早くて正しい姿勢のスピン、正確なステップ、そして高難度ジャンプ。
それらのすべてを音楽に調和させ、一音一音に心を込めて、フィギュアを極めようとしている選手がいます。
そして、その姿を追っている子供たちが、同じように美しいスケーターになりたいと、日々頑張っています。
技術と芸術を分ける必要なんて本当はないんです。
技術も、芸術も、手に入れようとしている選手がいるんですから。
取り敢えず、大きな変革は平昌の後です。
結弦くんが追い求めてきた美しい競技が、また魅力を失うなんてことにならないよう、ISUには熟慮に熟慮を重ねて欲しいと思います。
これから先の子供たちが「昔は良かったよな」なんて言わなくてもいいように、大人たちも
「自分が観客だったら何を見たいか。魅力的な競技とは何か」
を考えて運営し、その上で子供たちが楽しく競技できる環境を整えてやって欲しいなと思います。
以上