いやあ、毎日毎日、日々フィギュアのルールと格闘しています。

ISUが出しているジャッジマニュアルも読んでみましたが、とにかく複雑で、読んでるだけで眠くなりました。

つーか、気絶しなかった自分を褒めてあげたいです(笑)


でも、テレビじゃルールの解説なんてしてくれませんからね。
フィギュアという競技が、どれほど複雑なルールの元で行われているのか、こういったテキストで初めて知って、そして目ん玉が飛び出ているところです(笑)

私が読んでいるのはこれ。
14-15年度版のルールです。(シングルのみ)

中のアンダーラインが引かれた部分が今季改訂になった部分みたいなんですが、とんでもないですよね。
アンダーラインだらけです。

ジャンプという、最も変更の少なそうな部分ですら、かなりの変更が入っています。
コーチ陣はこの変化に対応していかなきゃならないんだから、どれだけ大変かってことですね。

そらまっちーが「発表が遅すぎる」と言うはずです。



むかーしむかし、フィギュア競技は「コンパルソリー」「規定」「フリー演技」という3種目があったわけですが、「コンパルソリー」は廃止され、「規定」が「ショートプログラム」に変わり、現在の「ショートプログラム」と「フリープログラム」という形になりました。

ええ、そんな時代もフィギュアは見ていたんですよ。
ほとんど覚えちゃいませんが(遠い目)


なので、ショートプログラムは単に短いというだけではなく、規定要素に自由度がなく、むしろフリーより難しいのです。

結弦くんが「やっぱショートは難しいです」と言っていたのはそういうことです。

で、最初は最も解りやすいジャンプを理解しようと思ったのですが、ジャンプを知るには、その前にエッジを理解しなければ始まらないということに行きつきました。


エッジは全てのキモです。
これを知らなきゃまずジャンプも語れません。


というわけで、とりあえずエッジの理解から始めたいと思います。


フィギュアシューズの刃(ブレード)は、スピード用のブレードより厚く、3~4ミリほどあるのですが、ブレードの下は平らじゃありません。
3ミリ程度の幅でありながら、真ん中が少し窪んで、左右が鋭く研がれています。

つまり、選手達は、片足2本、両足4本のエッジの上で演技をしているということになります。

エッジは結構鋭く、下手に触ると手を切ることになります。なので、ブレードに触れる動きがある選手は手袋が必須です。

そのブレードは、真っすぐ立った時の体の外側のエッジを「アウトサイドエッジ」体の内側のエッジを「インサイドエッジ」と呼びます。
片足で立って真っすぐ滑ると、理論上は氷の上に平行の2本の線が引かれる感じでしょうか。

右足で立って、体を右側に倒すと、右足のアウトサイドエッジに乗る形になります。
左側に倒すとインサイドエッジです。

体を倒したまま滑ると、氷の上の線は、理論上1本だけになります。


全てのものは、接地面が小さくなればなるほど摩擦力が小さくなるため、エッジは真っすぐ立つより斜めに立った方が接地面が小さくなり、スピードがでるという理屈になります。

なので、エッジを倒した方がいいのですが、下手な選手はエッジを倒すと自分も倒れるので(笑)エッジを倒しつつそれをコントロール出来る選手はかなりのテクニックの保持者ということになります。


この、エッジを深く倒した状態は「エッジが深い(ディープエッジ)」と呼ばれます。

パトリック選手などは、ディープエッジの代名詞のように例えられていますが、深く倒しただけでは単にひと漕ぎで長い距離を進めるようになるだけです。

パトリック選手の凄いところは、ディープエッジのままターンなどでスピードを落とさないところです。

この辺りになると、シロートにはわかりづらい部分になるので、あまり注目されませんが、悲しいことに、ジャッジが見るのはエッジなのです。


フィギュアは、舞踊ではなくスケートという競技なので当然といえば当然なのですが、どれだけ美しく演技をするかより、どれだけ上手く滑っているかが大事なわけです。

評価項目に「表現力」という項目がない以上、エッジコントロールが上手くてエッジワークの優れた選手に高い点が付くようになっているのです。



結弦くんはここに目をつけました。

評価項目で、すぐにでも、なおかつ確実に点を伸ばせそうなのは、新しい4回転を身につけることではなく、エッジコントロールを身につけることだと考えたのです。

日本ではリンクを長時間確保することがが難しいため、基礎が疎かになります。なので、基礎に重点を置くクリケットの方針は、まさに結弦くんの望んだ環境だったと言えます。


結弦くんは以前こんな事を語っていました。

子供の頃に徹底してスケーティングを叩き込まれたのに、ジャンプに力を入れるようになってからはそのスケーティングが疎かになった。17歳の今より小学生の頃の方が上手かった。

多分、本当にそうだったのでしょうね。

DVDの特典に入っていた「シングシングシング」のステップは、本当に見事でしたよね?

あのビデオは、きっとステップ重視で記録用に撮られたものなんでしょう。ずいぶん足だけを重点的に撮っていたようです。



同じ頃、同じ考えに辿り着いた選手がいました。

町田樹選手です。

町田選手は、フィギュアの原点と言われるコンパルソリーを徹底して滑り込みました。
本人は「修業のようだ」と言っていましたが、この基礎中の基礎を徹底して滑り込んだことで、エッジワークが格段に安定したのです。

それまで、表現力はあるのにイマイチ安定しなかったまっちーが、コンパルソリーを滑り込むことで表現力にエッジワークがプラスされたのです。

パトリック選手の凄さは、パトリック選手を初めて指導したコーチが昔堅気の人で、子供の頃に徹底して基礎練習をさせられたからだという話ですが、これほどまでに大切なエッジワークが、最近少し疎かにされてきているようです。

ロシアのジュニアはジャンプを正しいエッジで跳ばなくてもいいと思っている人もいるようですが、今季からエッジエラーは厳しくとるようになったようです。
そういう点は、きっちり修正しておかないと来期の成績に響いてくると思います。


まあ、子供に基礎をやれと言っても絶対に嫌がりますからね。
そんなことに時間を使うより、早くジャンプを身につけたいのです。

新しいジャンプをひとつプラスできれば点数が一気に伸びるので、子供のうちは新しい技に目がいきがちになると思うのですが、ジャンプをいくら決めても、基礎ができていないと、ある一定レベル以上には点数が伸びなくなります。


エッジワークが拙いと、プログラムコンポーネンツスコア(PCS)が伸びないからです。
反対に、基礎が出来るとターンやステップのスピードが上がり、ジャンプやスピンも安定します。

それにより確実にPCSは上がります。
同じプログラムを滑っても、エッジワークの上手い選手の方が絶対に美しい演技になるからです。


結弦くんがカナダに行って点数が一気に上がった時、アンチの人達は「買収」だとか「オーサーの陰謀」だと騒ぎました。

エッジワークの上達は、あまりハッキリとわかるものではないからです。

でも、プロの方々にはハッキリ解るようです。
解説の樋口豊さんも、結弦くんのスケーティングについて「上手くなりましたよねぇ」とおっしゃっていたので、エッジコントロールが上達した今、PCSが上がるのは当たり前のことなのです。


結弦くんは、クリケットに行って1年半で、新しい4回転ジャンプより得点の伸びる、エッジコントロールを身につけたのです。


ところで、エッジを見ていると目につくのはブレードです。

トップ選手達は、早い人で2~3ヶ月、遅い人でも1年に1度は替えると言われているスケート靴ですが、最近日本人選手に「レボリューション」が流行っているということです。

結弦くんの、あの、エッジの上部がカーボンになった、少し変わった形のブレードです。
(カーボンになっていないタイプも併用しているみたいですが…)

あのブレード、ウイルソン社のパターン99レボリューションという説とミッチェルキング社のファントムレボリューションだという説のふたつがあったのですが、サイトを見比べてみると、どちらも同じブレードに見えます(笑)

でも、まあ、メーカーのサイトに紹介されているので、ウイルソン社のパターン99レボリューションでOKなのでしょう。









レボリューションの利点は何かというと、普通のブレードより軽いということです。

スケート靴は重いので、それが軽くなればジャンプは楽になるし疲れにくくなります。ミスも減り怪我のリスクも減ると思います。


ただ、そのぶん重りがなくなるようなものなので、ジャンプの軸は作りにくくなりスピンやステップも安定しづらくなります。

まあ、真央ちゃんもレボリューションですが、大ちゃんは元のブレードに戻したそうなので、その選手の得意な技に合うか合わないかは人それぞれということでしょう。

どちらかと言うと、ジャンパー向きのブレードかもしれません。



軽いぶん壊れやすいという話も聞きますので、体重の軽い人向けかな?(笑)

なんにしても、憧れの選手が使っているから、なんて理由で気軽に変えられるブレードではなさそうです。


話が逸れましたが、フィギュアのキモはエッジである!ということを頭に入れ、これからもお勉強を進めていきたいと思います。


以上