今日は思い切り文句を言いたいと思います。
ええ、文句なんです。
かなり熱くてウザいので、カムイを知らない方は、スルーしてくださいね。




先日、「カムイ外伝」を見てきました。

実を言うと、ネット上での評判があまりにもよろしくなかったもので、見ようかどうか躊躇していたんですよ。
私も御多分に漏れず、カムイは大好きだったんです。
なので、イメージを崩されたくないと思って控えていたのですが、モタクサしているうちに上映が終わっちゃいそうだったので、重い腰を上げてお出かけしたわけです。(いや、シネコンまで20分ですけど…)

しかし…
やられました…。

ぶっちゃけ言っていいですか?

誰か、コレを作り直して~!わーん怒

いやあ、役者は頑張ってました。
小道具とかもリアルだったし、本当に役者は怪我も恐れず頑張っていたと思うんです。(つか、松山くんは本当に怪我をして、撮影が半年ズレたし、確かスガル役だった菊地凛子さんも怪我をして交替したはずです)

しかし…役者がそこまでやったのに、監督が余りにも、カムイの世界を理解していなかったのです。

最初、ネットで
「監督は何を描きたかったのかわからない。カムイは、人間の生きる力を描いた作品なのに、陳腐な娯楽作品にしてしまった」
「CGが余りにわざとらしい。海も青過ぎる」
と叩かれていたのを見た時、私はまだ擁護派でした。
「今回作品になるのは『カムイ伝』じゃなく『カムイ外伝』の方じゃない?外伝は娯楽作品だよ。しかもストーリーは『スガルの島』じゃん。エンターテインメント性溢れる娯楽作品に向いてるよ。だから娯楽作品になって正解なんだよ。つか、海がわざとらしいって、いいじゃん。海くらい青くたって」
そう思っていたのです。

だがしかし!
映画を見てびっくりしました。
カムイが…あのカムイが…




南国リゾートでまったりしていました!おののく

これはイカンでしょ!
やっていいことの限度を超えてるでしょ!

もう、海が青過ぎるの、CGがわざとらしいの、の問題じゃないんですよ!
舞台が、世界が!
カムイじゃないんですよ~!

私は、犀監督の他の作品は知らないし、年に映画館で見る映画も10本あるかないかだから、エラそうなことを言える立場ではありません。
でも、見る映画はほとんどアクション映画という、自称アクション大魔王です。
だからこれだけは言わせて欲しい!
アクションは、引きで撮ったらダメなんだってば!
アップで撮らなきゃ!
そしてカット割りをした方が、役者も安全だし迫力も出るんです。

高いところから飛び降りた不動が、地面近くで失速するなんて、吊られているのがバレバレなんだから、そんな不自然な絵にするならカット割った方が、ナンボかマシなんですよ。
砂に隠れていた追忍が、嘘みたいに飛び出すところを上空から撮ったらダメなんですって。あれはカムイの目線より下から撮らなくちゃ!


多分、監督はアクション作品を撮ったことがないんだろうし、当然ワイヤーも初心者なんだと思います。
だったら、自分のフィールドの中で全力を尽くしつつ、少しずつアクションを学び、その上で大作に挑むべきだったと思います。
しかも、カットを割らずに長回しするのにこだわっているのか、引いた映像の中で不自然な動きの忍達の戦いが続きます。
役者が体を張ることを当たり前だと思っているような撮影方法は、アクション監督として失格です。
事実、何人も怪我人を出し、撮影が遅れ、しかも、体を張った動きは不自然なCGによって努力が帳消しにされていました。

つまり、アクションについてはそのくらいの出来だったということです。

脚本もマズかったと思います。
飛ぶ鳥落とす勢いの宮藤官九郎氏ですが、あの人は人間が好き過ぎるんです。
だから、カムイのような、とことんどす黒い人間世界が書けないんです。
一生懸命、原作に忠実に書いていたけど、結局、表面をなぞっただけの印象しかありませんでした。
カムイの持つ寂寥感。茫漠たる無情感。


命を懸けて手に入れた、ささやかな幸せと暖かな居場所を、自分を追ってきた追い忍に、まるでみせしめのように皆殺しにされてしまう。

そのカムイの、血を吐くような怒りが全く伝わって来ないんです。


しかも、例え追っ手といえど戦意を失った人間は殺さないカムイが、「うぬだけは許さない!」と、生きたまま、不動を鮫のいる海に引きずり込む、怒りのシーンはカットですわガクリ

世間一般的には、松山くんは演技派で通っていると思うんですが、カムイに関していえば、カムイの人間性を理解出来ていなかったと思います。
彼自身、かなり悩んで落ち込んだらしいです。
松山くんのように、役に同化するタイプの役者は、自分が演じる対象が、何を考えどう行動するのか、そこまで理解して初めて演じられるのだと思うのですが、カムイは覗き込むには余りに暗い深淵だったのかもしれません。
多分、昭和の、ギラギラした目をした役者になら演じられたかもしれませんが、飢えも孤独も知らない現代の若者には難しい役だったと思います。

まあ、だから役者は責められません。

南国リゾートのカムイは、全てロケーションの失敗であり、選んだ人間の責任です。

「映像+(プラス)」という雑誌で監督が言っていました。
「プロデューサーと、次は何を作ろうかという話をしている時に、ふっと出たんですよ」

つまり、1番の原因はそこにあるのです。
突然決まったタイトルなのに、「カムイ」という作品の名を出したらとんとん拍子に出資が集まり、「カムイ外伝なら超大作だろうと」みんなが期待をした。
想像以上に膨らんだ企画に監督自ら足元を見失い、ニュージーランドロケだの言い出す始末。
ニュージーランドは諦めたけど、決まったロケ地は沖縄…。


うかれていたとしか思えません。

半兵衛が、命を懸けて領主の馬の脚を切り落としたのは、漁師の命とも命言うべき仕掛けを作るため。
貧しい漁村で、家族を飢え死にさせないためには、仕掛け作りに命を懸けなければいけない。

しかし、映画の中の海は、エメラルドグリーンの豊かな海です。そんな仕掛けを作らなくても、魚はいっばいいそうです(笑)
家の周りは、南国の植物が生い茂る豊かな森(笑)
きっと、山に行けば果物も取れるはずです(笑)

予算や色々な諸事情で、沖縄になったのは仕方ないし、松山くんの怪我で、冬に撮るはずが夏になったのも仕方ありません。
でも、舞台は瀬戸内海のはずなのに、エメラルドグリーンの海は有り得ないですよね?

監督は、植生の違いなどはたいした問題じゃないと言っていましたが、カムイにとっては「過酷な生活環境」こそが肝なんです。
仕方なく夏になったのなら、画像処理をして、色を少し変えれば良かったのです。
あんな、魔化魍みたいな嘘臭い鮫を出すなら、海の色を変えたほうが、よっぽど効果的だったと思います。

画像処理で荒涼とした雰囲気を出すことは十分に可能なはずです。
以前、三池崇監督の「スキヤキウエスタン ジャンゴ」を見たことがあるのですが、イメージとしては「ジャンゴ」の背景のほうがよっぽど「カムイ」のイメージに近かったように思いました。
「カムイ」なんですから、もっと汚くて、グロくて、痛くていいんですよ。
見て美しい映像にする必要はないんです。

「『カムイ外伝』は全部で40話もある。第二弾、第三弾も有り得る」
と犀監督は言っていましたが、勘弁して下さい。

もし作るなら、三池監督にバトンタッチして下さい。
私は三池監督のファンではありませんが、描いてきた世界観を見る限り、三池監督の方が「カムイ」に合っていると思います。
暴力的でグロくなるかもしれませんが…。

ただ、この作品、外国人が作ったサムライものみたいなので、海外では受けるかもしれません。

カムイの必殺技「夙忍法 飯綱落とし」や「変移抜刀霞切り」なんかは、とても格好良く描かれていました。
でも、霞切りを破った不動を、何故倒せたのかまでは描かれていません。


カムイがミクモの命を懸けた技を破ったように、常に自分の必殺技の弱点まで研究していたからだという部分が描かれていないので、気合いで勝った!みたいになっていたのが残念でした。
ハッキリ言って、そこを描かないならミクモのシーンもカットすべきだと思いました。

あ、ミクモ役の芦名星ちゃんは熱演してましたよ。
妖姫をやっていた時よりはるかに恐ろしく、激しいアクションをこなしていました。




まあ、長々とぶーたれてきましたが、ここを読んで逆に興味を持った方がいましたら、話のタネにはオススメです。
できれば、アニメの「忍風カムイ外伝」を知っている人と一緒に行くと、その後の会話が弾むこと受けあいです。


以上!