またもや手塚治蟲のブツダ。
獵師夫婦の息子、アツサヂを修行に同行するやうに
强要され、逃亡するシツダルタとデーパ。
無事、逃亡に成功する。
シツダルタはある疑問をデーパにぶつけた。
シツダルタ「こんなこと聞いちやしつれいだけど その目はどうしたんですか?」
デーパ「これかね 自分で燒いたんですよ」
シツダルタ「自分で? 自分の眼を?」
デーパ「さうだある盜賊の家で苦行とはどんなものか見たいといつた
目を燒いてみせたのだよ」
シツダルタ「あなたは氣・・・だ」
(嶋佐注:後の文庫や愛藏版では「あなたは精神異常だ」と修正されてゐる)
デーパ「いいや正氣だつた
それで相手に苦行のいみが分かればいいと思つたのだ」
シツダルタ「そんな苦しみなんてむだだ ばかばかしいことですよ」
デーパ「きみは『苦行』のいみがわかつてゐない」
デーパ「苦行(タパス)とは『熱』といふいみもある もともとは炎熱の下に身をさらすことなんだ つまり太陽のもと自分のまわりに焚火をして上と四方から自分を熱して苦しめるんだ これを『五熱』といつてゐる」
「しかしだんだんとほかの方法でもからだを苦しめる方法ができた…
からだを苦しめればそれだけ心が清らかになるんだ
慾がはなれるからね」
この頁は、第3部の第1章「苦行」である。
私の持つてゐる單行本には「苦行」と書いて、
「タパス」と振り假名がある。
デーパから苦行の説明を受けるシツダルタ。
それでもシツダルタは苦行に疑問を抱いてゐるのだ。