今敏監督
荘司美代子、小山茉美、折笠富美子、
飯塚昭三ほか（すべて声）
小さな制作会社を営む立花源也が、
撮影所閉所にともない
かつての大女優・藤原千代子の
ドキュメンタリー制作を企画する。
彼女のインタビューを撮るため
人里離れた邸宅を訪ねる。
30年前に突如映画界から
姿を消した千代子は、
幼い頃に出会った反政府活動家で画家の青年に
恋をしてしまいます。
出会いと別れを繰り返した彼女は、
彼に再び会うことを願い女優の道へ。
意中の人を追いかける役を演じ続け、
次第に評価を高めていく。
虚構と現実、過去と現在が
交互・混在しながら進んでいく物語は見事。
物語が進むにつれ、千代子は映画監督と結婚。
時の経過とともに青年のことも少しずつ
思い出せなくなっていくことなども
吐露します。
そして青年が実際には帰らぬ人に
なっていることを知るシーンなど
夢見るハッピーなだけではない
世界観も素敵です。
物語のなかで千代子が発する
「どっちでもいいのかもしれない。
だってあたし、あの人を追いかけてる
あたしが好きなんだもの」
というセリフは、
この物語のテーマ“虚構と現実で生きた
人物の物語”を
明確に表しているものとして心に残りました。
ＳＦじみたところとか少しぶっとんだ
ところもあります。
千代子のすごさが伝わらないまま
彼女を崇拝する冒頭からは
少し入り込みにくいところもありましたが、
エンタメの端くれで働いたことのある
私としては、
世間のイメージや世相が犠牲にした
一人の女優という描き方でなく
彼女は彼女らしくいることに主眼があり、
それは虚構のなかでも
現実でも構わないという
生き方を描くところに
とても魅力を感じました。
そもそも私たち人間はみんな
いつか死ぬことを初期設定されて
命を与えられて、それぞれの人生を生きる。
その意味ではとても理不尽で、
儚いから素敵で、崇高であることは
ある意味ではみんな俳優なのかもしれないなぁ、なんて思いました。
