思春期 | shingo722のブログ

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 「思春期」
 
 吹き抜ける風が彼女の髪を揺らし、シャンプーだかリンスだかの甘い香りが僕の鼻をくすぐった。反射的にすれ違う彼女の後ろ姿を僕は目で追ってしまい、その真っ直ぐな長い黒髪に見とれていた。そのようにして僕は中学生だった。まだ自分の恋愛感情だの性欲だのをどう扱って良いか分からず持て余していた僕は、家に帰ってからも自分の部屋の学習机の前でただ悶々と彼女のことを考え続けていた。あのとき僕は何と声を掛ければ歩き去ってゆく彼女を振り向かせることが出来たのだろう。そしてそこから笑顔で二言三言会話を交わすことが出来たなら、僕はどんなものでも差し出す覚悟は出来ていた。思春期の僕はそれほど切実に女の子との会話に憧れていた。実際に喋る機会があったとしても僕はしどろもどろとして自分の思っていることの半分も話すことなど出来はしなかったのだけれど。
 あれから20年以上の月日の経った今でも、女性と話すときに緊張してしまう癖は直っていない。差し当たって脂汗をかいて逃げ出すことまではしないまでも。それでもあのときの部屋で一人悶々としていた頃の自分は、確かに僕の中にいるみたいだ。