「初雪」
ひとひらの花びらが舞い落ちるように初雪の最初の一粒が降ってきた。そのときは十二月の初めで僕はダッフルコートのポケットに両手を突っ込みながら一人街を歩いていた。やれやれ、と僕は思った。季節がひとまわりしたのだ。彼女を失った地点からどんどん僕は離れていく。いや、同じところをぐるぐる回っているだけなのだろうか?季節が巡るように、僕の感情も浮き沈みを繰り返し、結局また同じ地点に帰って来たのだった。冬は僕にとっては喪失の季節だった。
一段と冷え込んだ気がして僕はマフラーの内で首をすくめた。それが気温の低下のせいなのか、甦った記憶のせいなのか定かではなかったが、冷え切った身体を庇うように僕はノロノロと人混みを抜けていった。彼女は新しい恋人と幸せにやっているのだろうか?ふいに湧き上がった雪とは程遠い真っ黒な感情に僕の胸は痛んだ。
再び季節が巡れば、時の川に洗われて僕の感情が少しでも綺麗になっていることを祈りながら、僕は少しだけ歩調を速めて歩き出した。