「謝肉祭」
その圧倒的なカーニバルの熱気の中にあって、僕は否が応でも自分が異邦人である事を強く意識せずにはいられなかった。飛び散る汗、香辛料のような強く鼻を刺激する香水の香り、そして裸同然で踊る人々の放つ圧倒的な熱気…。僕は熱に浮かされるように、踊り狂う人々の僅かな隙間をよろよろと彷徨い歩き、そのテーブルに辿り着いた。テーブルの上にはこんがりと焦げ目の付いた見るからに美味そうな肉の塊が大皿に乗せられていた。その巨大な肉塊の周りには飾り付け程度の僅かな野菜が散らされている。そして今まさにコックの手によってその肉は切り分けられ、踊り疲れて腹を空かせた人々の手に振る舞われようとしていた。
「これは一体何の肉なのですか?」
僕は拙い言葉で近くにいた男に話しかけてみた。
「日本人かい?」
そう言って彼は侮蔑とも嘲笑ともとれる視線を僕に投げかけてきた。
「まぁ、そうだよ」
僕はしどろもどろに答えた。カーニバルの熱気で頭がクラクラとしていた。
「いいから食べてみなよ。仲間になりたいんだろ?」
彼はからかうように言った。
僕はコックの手から振る舞われた皿に乗った肉に半ば意地で半ばヤケで齧り付いた。その瞬間、強い香辛料の香りも相まってこれまで食べたことの無いような味が口の中に広がった。
「ねぇ、本当にこれは何の肉なの?」
鋭い笛の音とサンバの音色に僕の声は掻き消され、どこまでも僕は異邦人だった。剥き出しになった人々の肌や隆起した筋肉がやけに目につき、僕は込み上げる吐き気を堪えるようにその場にしゃがみ込んだ。