面影 | shingo722のブログ

shingo722のブログ

ブログの説明を入力します。

 「面影」
 
 細分化された意識の奥で面影の彼女が微笑っていた。少なくとも僕にはそんな風に見えた。あるいはそれは見る角度や光の加減でそう見えただけだったのかも知れない。ただ日差しに顔をしかめただけだったのかも知れない。僕が思い出すことの出来る彼女の顔はいつも泣いているか、あるいは怒っているか、そうでなければ無表情という有り様だったからだ。そう、僕たちは付き合っていたのかどうかさえ分からなかったのだ。僕が一方通行の感情を美化してそう思い込んでいるのだとしたら恐ろしいことだった。彼女の魂はあまりにも繊細で脆く、奇妙に歪められた記憶の中に閉じ込めておくわけにはいかないものなのだ。
 僕は部屋の床にゴロリと横になったまま煙草に火をつけて天井を睨んだまま一口それを吸った。薄い煙草の煙は天井まで昇って行くとそこで行き場を失ったようにしばらく留まって消えた。まるで報われることの無かった、僕のささやかな望みのように。