「旅路」
繰り返す時の波に心洗われるのを感じていた。彼女と別れてからもう半年が経つのだ、そう思うと不思議な感じがした。傷付いた直後のあの脈打つような痛みは徐々に薄れ、ふと気がつくと彼女のことをあまり考えなくなって来ている自分に驚いた。あれほど、一緒にいることが当たり前だと思っていたのに。
あるいは僕は、どこか遠いところまでの旅路を歩き続けて来た旅人のように、心擦り減らしながらこの半年間を生きてきたのかも知れなかった。しかし遠い距離がときとして人が心に背負い込んだ苦しみを解き放ってくれるように、僕の心は今穏やかだった。
僕はずしりと重たかった荷物を傍らに置くと、額に滲んだ汗を拭いてこれから先の道のりを見渡した。そこにはこれまでの苦しみを経て辿り着いた、美しい景色が広がっていた。