タクシー | shingo722のブログ

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 「タクシー」
 
 「こんな仕事をしてるとね、実に色んなお客さんを乗せるんですよ」
 タクシーの運転手はぼんやりとした目で前を見ながら言った。
「あれはシトシト雨の降る今日みたいな日でした。山道を走ってると女の人が1人で立って手を上げてるんです」
 運転手は相変わらずぼんやりと当時のことを思い返すような目つきをしている。僕は後部座席でモゾモゾと落ち着かずに座り直した。
「夜中だったし気味が悪かったんですけど一応車を止めて、どこまで?と尋ねると女は行き先を告げたきり一言も口を聞きませんでした」
 僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
「しばらく車を走らせて目的地に着いてみるとそこは墓地でね。恐々車を路肩に寄せて、お客さん、着きましたよって声を掛けて後ろを振り向きました。するとそこには何と」
 僕は鼓動が激しくなるのを感じながらその次のセリフを待った。
「あ、お客さん、着きましたよ」
「え⁉︎」
「ここでしょ?言ってた住所」
 どうやら僕の目的地に着いたらしい。
「それで後ろを振り返ったらどうなったんですか?」
「すみません、予約が入ってるもんで次行かなくちゃ」
 僕は狐につままれたような面持ちでタクシーを降りると、呆然とそれを見送った。怖い話をするのはいいけど、ちゃんと尺に収まるように話して欲しいものだ。